濃度依存的な液相分離はタンパク質の発現上昇にともなう毒性の原因となる

A Concentration-Dependent Liquid Phase Separation Can Cause Toxicity upon Increased Protein Expression.

Bolognesi B, Lorenzo Gotor N, Dhar R, Cirillo D, Baldrighi M, Tartaglia GG, Lehner B. Cell Rep. 2016 Jun 28;16(1):222-31. doi:10.1016/j.celrep.2016.05.076. Epub 2016 Jun 16. PMID:27320918

以前、過剰発現が引き起こす細胞増殖の阻害に関するエントリーに対して、TM氏から「stress granuleのような今流行りのliquid-liquid phase separation(液-液 相分離)が、構成因子の高発現でectopic(異所的に)に引き起こされるようなケースはどうでしょう?」というコメントを頂きました。

正直に申し上げましょう、わたくし、「液-液 相分離」というものがこの時何か知りませんでした。それで、ちょっと調べて(それでもいまいちピンとこなかった)、適当にコメントを返しました。

今回、まさにTM氏の予言(?)通りの論文が発表されました。「Mip6の過剰発現は、液-液 相分離によりGranule(顆粒)の形成を引き起こし、これが細胞増殖を阻害する」というものです。そして、これがタンパク質過剰による増殖阻害の原理の一つだろうと言っています。私たちの2013年の論文のデータ使われてちょっと嬉しいです。

「 タンパク質過剰による毒性マニア」の私には、見過ごすことができない内容です。ということで、関連論文を読みつつ、TM氏にも周辺情報を教えていただき情報を整理しました。

Stress granuleやP-bodyと言われている細胞内顆粒は、タンパク質の凝集体ではなく、形が柔軟に変わり周辺との分子の入れ替わりが盛んであるという「液体」の性質を持っています。これらの顆粒は、ミトコンドリアやペルオキシソームなどのオルガネラ(細胞小器官)に匹敵するサイズを持っていて、膜で隔てられおらず、条件に応じてダイナミックに形成され消失します。

この形成の原理は「液−液 相分離」です。このGranuleは、RNA(mRNA)とRNA結合タンパク質がコアになっていて、それに多数の因子が結合しているようです。タンパク質とRNAの塊が、液体の性質を残しつつ細胞質とは分離された構造を作る(液−液 相分離)、とても面白い現象だと思います。RNAとネバネバの性質を持つタンパク質どうしが集まって油滴のように分離した構造を作るというイメージでしょうか。

一方で、これは新しい概念のようですが、実は、高校の生物学で習う細胞小器官にも液−液 相分離によって作られているものがあります。それは、核小体と中心体です。膜で隔てられていないのにどうやって構造を作っているのか? その秘密が液−液 相分離によってできる構造だったのです。私自身もこの2つの構造がどうやって作られるのかと思っていたのですが、液−液相分離の話を聞いてはじめて納得がいきました。

TM氏の言葉を借りれば、液−液 相分離による細胞内顆粒の研究は、「ここ十年で最大のホットトピックの一つ」だということです。近年、Cell誌などに多数の論文が発表されています。今後もいろいろと面白い話が出てきそうです。

このエントリー作成あたっていろいろ教えてくださったTM氏(個人的にとても仲良くさせていただいている東京大学の先生です)に感謝致します。

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