SRPはタンパク質輸送の効率と特異性を決める

Defining the physiological role of SRP in protein-targeting efficiency and specificity.

Costa EA, Subramanian K, Nunnari J, Weissman JS. Science. 2018 Feb 9;359(6376):689-692. doi: 10.1126/science.aar3607. Epub 2018 Jan 18. PMID:29348368

研究室のHakuさんがデビュー戦で紹介した論文です。

真核細胞は、細胞内が細胞小器官によってコンパートメント化されています。それぞれのタンパク質は、ちゃんと目的のコンパートメントに運ばれて機能してくれないと困るので、そのために複雑だけどよくできたメカニズムを進化させてきました。真核細胞のタンパク質の合成(翻訳)は、ほぼすべて細胞質で行われ、そのうち30%以上のものは、細胞質にはとどまらず小胞体(ER)やミトコンドリアに運ばれます。

ERへのタンパク質の輸送(ターゲッティング)は、「シグナル認識粒子(Signal Recognition Particle: SRP)が、リボソームから出てくる翻訳途中のタンパク質の配列(輸送シグナル)を認識して結合し、リボソームをER表面に連れていき、翻訳しながらER内にタンパク質が輸送される」というのが、そのメカニズムとして古典的に知られているものです。ちなみにこれは、バクテリアの細胞表面(ペリプラズム)へのタンパク質の輸送にも使われる共通のメカニズムです。

ただ、タンパク質のターゲッティングは実はそれほど単純ではなく、SRPに依存するもの(翻訳しながら輸送するもの)の他に、SRPに依存しないもの(翻訳が終わった後に輸送するもの)が存在することが明らかになり、さらにどのような配列・性質を持ったものがそれぞれのメカニズムによって輸送されるのか、その詳細が最近になって次々と明らかになってきています。

特に最近、翻訳されながらERやミトコンドリアにターゲッティングされるタンパク質を一網打尽に同定するための革新的な技術が開発されました。それが、「Proximity Specific Ribosomal Profiling(近接特異的リボソームプロファイリング)」です。リボソームプロファイリングは、リボソームが噛み込んだmRNAの配列の出現頻度を決定することで、「細胞の中で、どのmRNAのどこの配列がどれくらい翻訳されているか」を知ることができる技術です。以前このブログでも、「タンパク質の合成速度の絶対定量を可能にした技術」として紹介しました

Proximity Specific …は、これをさらに改良し、ER表面やミトコンドリア表面にあるリボソームが翻訳しているmRNAを同定できるようにしました。これにより、まずはERにターゲッティングされる一群のタンパク質がわかりました。今回筆者らはさらに一歩踏み込んで、SRP依存的にターゲッティングされるものを同定することにしました。SRPがないと細胞は生きられないので、筆者らはSRPを条件依存的に分解するという作戦を取りました。このため、国立遺伝学研究所の鐘巻将人さんが開発した「オーキシンデグロン(AID)」を用いています。この系では、オーキシンを加えると瞬時に標的のタンパク質を分解することができます。

結果として、SRPの分解後にERに運ばれなくなったmRNA、つまりSRPによってERに運ばれるmRNAは、これまでよく知られていたようにシグナル配列や膜貫通ドメインを持つタンパク質でした。また、「SRPに依存せずERにターゲッティングされる」とされていたmRNAの大半は、SRPがなくなってもやはりERに運ばれました。「これまで分かっていたことが大体正しかった」ということで、この結果自体は大発見ではないといえます。一方で、この結果は、「ERに運ばれるタンパク質が何であり、それがどうやって運ばれるか大体分かった」ことを意味するわけで、これはこれでスゴイことだと思うのです。

ただし、この論文には、SRPの機能についてちゃんと面白い発見があります。SRPが壊れると、SRPの標的タンパク質はミトコンドリアに間違って輸送されてしまうようで、そのせいでミトコンドリアが機能不全(断片化)を起こしてしまいます。そういうことで、SRPの役割は、ERに運ばれるべきタンパク質をきちんとERに運ぶための仕分けだということになります。ちゃんと仕分けされてないと、目的の場所に荷物(タンパク質)が届かなくて困るだけじゃなく、変な場所にどんどん荷物が運ばれて運ばれた先に迷惑がかかるという、人間社会でも起きそうなことが細胞の中でも起きているんですね。

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