遺伝子発現差解析はマイクロアレイ?、それともRNAseq?

最近、マイクロアレイを使った遺伝子発現差解析をやりました。解析自体は受託解析なのでこちらはRNAサンプルを準備しただけです。時間はかかりましたがきれいなデータが帰ってきました。

ただこの時に気になったのは、マイクロアレイというのはできてからかなり時間がたっていて、今やRNAseqという新しい技術ができ、すでに「時代遅れの」技術なのではないかという懸念でした。

確かに酵母の国際学会に行っても、次世代シーケンサーを使った解析が花盛り。一昔前にはアレイを使った解析をよく聴きましたが、今ではほとんど聴きません。もちろんやっていない訳ではなくて、花形の技術ではないので、それを全面に押し出した発表がないだけかもしれません。当たり前すぎて静かにデータを出しているということかもしれません。

私が愛読している海外の研究者のブログにも、「ときどき日本の研究者ブログでいまだにマイクロアレイをしてる人がいてびっくりするんだけども、今マイクロアレイをするメリットはゼロだ。コスト、クォリティー、すべてにおいて次世代シーケンサーが上回ってる。」とすら書かれています。

ただ実際問題として私が受託解析の見積を出したところ、RNAseqはマイクロアレイ解析の3倍以上の価格で、現在の日本では、少なくとも「コスト」という面で上回ってはいませんでした。

それで今回の分子生物学会です。

マイクロアレイで有名なアジレント(私たちも今回ここのアレイを使いました)が、ランチョンセミナーをやっていて、遺伝子発現差解析ならば、マイクロアレイの方がいろんな点で優れていることを紹介していました。マイクロアレイは時代遅れの技術と思っていたのに、これだけの力を込めて宣伝していることに少し驚いたのですが、実際言っていることは納得のできるものでした。

ダイナミックレンジの広さ(5ケタ)ーこれを次世代シーケンサーでだそうとすると膨大なリード数が必要となること、次世代シーケンサーでは、遺伝子長の長い遺伝子ほどより検出されやすい、といったことです。資料は、アジレントのホームページを「発現差解析」で検索するとでてきます。

このダイナミックレンジの広さは、以前に比べてマイクロアレイの品質が向上したことにもよるそうです。アレイの会社も努力は続けているようです。また、今回受託解析をしてみて感心したのは、QCやデータ解析もとても体系化されていました。

確かにRNAseqには、アノテーションされていない転写産物を同定できるメリットなどはあると思います。しかし、酵母のように遺伝子がほとんどアノテーションされていて、かつ目的が遺伝子発現差解析である場合には、やはり今でもマイクロアレイが一番の選択肢であるように思いました。

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追記:

共同研究者の方から「RNAseqでは、通常トランスクリプト長で補正をかけるのではないか?それでも長いトランスクリプトの方が検出されやすいのか?」という質問/指摘をいただきました。

手許にあるアジレントの資料によると、「長いトランスクリプトの方がシーケンスされるリード数が多くなり、検定を通りやすくなるために起こる現象」ということで、長さの補正はかけた上でも起きる現象のようです。リード数が少ないとなおのことこの現象が強くでるようです。「検定の通りやすさ」を加味すれば良いのかもしれませんが、結構ややこしそうですね。

 

更に追記:

発表されたマイクロアレイの過去のデータはどこに蓄積されているのかという質問がよくあり、私もそれこそこないだの分子生物学会のデータベースのワークショップで、統合データベースの坊農氏のプレゼンで知ったのですが、GEOというデータベースがあるようです(余談ですがこの講演を聴いてはじめて、「統合データベースって使えるかも」と思いました)。使い方はYoutubeに動画があります

これで自分の使っているアレイを調べて、それを使った実験の結果をダウンロードすれば良いということになります。

実際には、別のアレイを使っておこなわれた実験結果と自分の実験結果の類似性もだしてくれるようなことを期待しますが、やっぱりそれはなかなか難しいのでしょうかね。

 

更に追記:

RNAseqとマイクロアレイの実験結果を比較したエントリーを掲載しました。

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