生体分子ネットワークの構造とダイナミクス

Structure of regulatory networks and dynamics of bio-molecules

 

望月敦史
(理化学研究所・基幹研究所・望月理論生物学研究室/自然科学研究機構・基礎生物学研究所・理論生物学研究部門/ JST・さきがけ)
mochi@riken.jp

 

生命現象の様々な局面において、多数の生体分子が相互作用の複雑なネットワークを作り、そのシステム全体のダイナミクスから、生理機能や形態形成などの高次機能が現れることが分かってきた。しかし、相互作用ネットワークの構造と、分子の活性ダイナミクスとを結びつける理解は、ほとんど進んでいない。私は、実験的に得られた生体分子相互作用の情報から、活性ダイナミクスの全体像を捉える理論を考案した。基本アイデアは、しごく簡単である。すなわち、各生体分子の活性ダイナミクスは、それを制御する因子の活性状態の関数である。この考えには二つの側面があり、生体分子活性状態の「不和合性(incompatibility)」、及び「独立性(independency)」と名づけた。前者の「不和合性」の性質によって、活性状態の定常状態の可能性を絞り込み、可能な状態数の上限を決定できる。さらに活性状態を特徴付ける、少数の因子を抽出することも可能である。一方で後者の「独立性」から、分子の活性状態の可能な組み合わせについての条件を導くことができる。ネットワークの構造から決まるこれら二つの制約(活性状態の上限数および可能な組み合わせ)を用いることで、実験データから未知の分子間相互作用や活性状態を予測することが可能である。例えば、ウニの初期発生にかかわる遺伝子ネットワークを解析したところ、多数の遺伝子を含む制御ネットワークの中から、遺伝子発現多様性に重要なごく少数の遺伝子を抽出できた。さらに遺伝子発現パターンの情報を取り入れることで、当時未発見の遺伝子発現制御を予測できた。この予測された制御は、後の実験で存在が確認されたものであった。その他、シグナル伝達系における生体分子反応など、複数のネットワークを対象にした解析を紹介する。

 

第22回システムバイオロジー研究会?