システムバイオロジー

システムバイオロジー日記

生命をシステムとして理解する

システムバイオロジーの研究の実際がどういうものなのかということは、将来的にはまとめてウェブなどに乗せようと考えているが、ここへきて一ヶ月の間にも僕の中でシステムバイオロジーに対する理解は様々に変化している。

「システムバイオロジーとはどんな研究分野ですか?」と聞かれたときにどう答えるか。

こういう命題にも僕の中で一ヶ月間の答えは変った。ただこの「分野」かなり幅広い人たちの、それぞれの方法でのアプローチがあるために、「システムバイオロジーとはこういう分野だ」とある研究者が言ったとしてもそれが他の研究者とのコンセンサスになっているとは限らない。

だから、「私たちが目指しているところの」という但し書きがつく。ところがこのラボは以前も書いたが皆の方向性が結構ばらばらなので、「私たち」ではなく「北野氏が」という但し書きをつけるべきなのかもしれない。

まあシステムバイオロジーという学問分野の提唱者が北野氏であるのだから、「北野氏の目指すところ=システムバイオロジーが目指すところ」と言い切ることもある意味OKなのかもしれない。北野氏が常に言っているのは、「システムバイオロジーとは生命をシステムとして理解する学問である」ということだ。そして「シミュレーションはその中で目的でなく手段に過ぎない」ともいっている。

遺伝学者というのは、生命現象を記述するのにシステムという言葉をよく使う。そして、当然システムとしての理解を目指している。したがって、遺伝学的なシステムとシステムバイオロジーのいうところのシステムの違いがよく理解できていなかった僕は、やっぱり「コンピュータシミュレーションを道具として使うバイオロジー」という定義を勝手にしていた。

ところが最近実際にシステムバイオロジーのソフトウェアを使っていて、なるほどこういうことをいいたかったのかとまさに目からうろこが落ちた気がした。

よくわれわれ生物学者はモデルを書く。それはあくまでも自分たちが考えていることをわかりやすく示したものに過ぎない。ところが、システムバイオロジーではモデルを書くのではなく、モデリングを行う。

モデリングとは「対象問題について深い理解を得るために、その対象をある目的または観点から眺め、細かくて余計な部分を取り除くことで、本質的な部分だけを浮かび上がらせる方法」だと萩本順三氏(株式会社豆蔵取締役)が述べている。

僕たち生物屋は、実際に「動く」モデルをモデリングするということはしない。生命現象をコンピュータ上で再構築すること自体がまだ不可能でナンセンスなことだと思っているからだ。ところが、「細かくて余計な部分を取り除いて」再構築するというアプローチでやれば十分可能なことだったのだ。

そしてそういうアプローチを目的としたソフトウェアを使ってモデルを書いていると、「ああ、こういうことがいいたかったのか!」とひとつ世界が開けた気がした。

シミュレーションそのものが何か新しい発見をしたわけではないが、シミュレーションしたことで新しい事実に気づくことができた。

「これは面白い」。この方向でやっていけるかもしれない。そう思える瞬間があった。

▲ # by Hismoriya | 2004-04-30 10:16 | システムバイオロジー日記