2012-01-07 (土) 00:00:00

リダンダンシ−とロバストネス

システムのロバストネス発揮の機構として、最もありそうなものに「リダンダンシー(重複性)」がある。例えば、飛行機のエンジンのように、複数の同じ機能を持つ要素をシステムに持たせることで、その1つが壊れても全体としての機能が維持できるようにしておくことがそれである。バックアップともいえる。

このリダンダンシーが、進化によってできた生命のシステムで、ロバストネス発揮の機構として利用されているのかどうかについては、未だに議論の的となっている。現在の大勢は、環境への適応のために作り上げられた機構がたまたまリダンダンシーを持っているだけであるという考え方である。

例えば、飛行機のエンジンだって、複数あるのはバックアップのためではなく、その方が通常の条件で安定した飛行が可能であるからである。確かに1つが壊れても飛べるが、それは安定な飛行を補償しない。

 
Railway.png
 

上は、私が大学時代を過ごした神戸の鉄道の様子である。阪急、JR、阪神の3つの鉄道が平行に走っている。15年前の阪神大震災の時に、この鉄道はすべて寸断され、大阪と神戸を結ぶ公的な道は断たれた。しかし、直後にこれら3社が協力することで、お互いに部分的な復旧を行ない、3つの鉄道を乗り継ぐことでいち早く大阪と神戸をつなぐ経路が復活した。

これは、確かに3つの路線があったことによるロバストネスといえるだろう。

しかし、3つの路線はお互いに、「大地震が起きた時にいち早く大阪と神戸を結び直せるように」というつもりで3つの重複した鉄道を造った訳ではない。それぞれの鉄道に需要があり、採算が合うからこそ造り、維持できているのである。逆に通常は激しい競争関係にすらある。

生命のシステムも同様に、ある擾乱に対して一見ロバストな振る舞いをすることがある。しかし、それが本当にその擾乱に対してロバストネスを発揮するために設計されているのか、それとも、何か別の目的で造られたシステムの副産物なのか、しっかりと見極める必要がある。

そうでなければ、生命システムに対する間違った解釈をしてしまうだろう。

 

2012.01.07追記

ところで、羽田空港へ行くには、東京モノレールと京急空港線がある。これは、「どちらか一方に不具合が生じた時にリダンダンシーを生むために設計されたものである」のかと思い、Wikipediaで調べてみた。やはり、結論としては、リダンダンシーというよりは、「東京モノレールだけでは増大する輸送量に対応できないとの判断から、」ということで輸送量に対するロバストネスだったようだ。

成田エクスプレスと京成スカイライナーの間にも、「リダンダンシーを作ろう」という計画があったようではない(これもWikipediaより)。従って、鉄道計画においては、複数の鉄道会社によるリダンダンシーを作ろうという(トップダウン、あるいは政策的な)設計思想は働かないようだ。

 

研究