一般的なシステムバイオロジーの概念とは?

私は数年前から「システムバイオロジーの提唱者」と言われる北野宏明氏のもとで研究をしてきました。その間ずっと「システムバイオロジーとは何か?」という疑問を持ちながら、「システムバイオロジーの研究者」と話をしたり「システムバイオロジーの学会」に参加してきました。

その中で、こういうとらえ方をすれば、だいたい今のシステムバイオロジーといわれる分野の範疇からは外れないだろう、と思われるものが以下の図です。

 
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  • 生命はそもそも階層化されたシステムです。例えば細胞や組織といった各レベルの「システム」はその一つ下のレベルの要素が複雑に相互作用して形づくられています。
  • これまでの生物学の各分野は図のようにだいたいそれぞれのレベルをカバーするように存在しています。生理学は古くから細胞や組織、個体の「システムの振る舞いの理解」を目的とする学問として成立して来ました。一方、ここ数十年の生化学や分子生物学、さらに近年のゲノミクスの発達により、遺伝子や蛋白質が次々と発見され、それらの性質やつながりが急速にあきらかになっています。これは「システムの構成要素の理解」が非常に進んだことを意味します。
  • そして、現代になって「システムの振る舞い」と「システムの構成要素」をつなげて理解する準備が整ってきました。このとき研究対象となるのは、この2つの分野が交わる「細胞」や「組織」レベルの生命システムです*1
  • このように生命システム理解しようとしたとき、当然膨大な数の要素と、それらの相互作用によって生じる非線形な生命の挙動を扱わなければならなくなります。そのためにコンピュータや数学の力が必要となります。
  • これらの分野が融合して、これまでバラバラに理解されてきた生命を「統合的に」理解していこうとするのが、システムバイオロジーです。

このような統合的な解析を行うために、システムバイオロジーには様々な研究分野の研究者が参加しています。そして、彼らはそれぞれに自分達の得意分野を持っているために、対象としている生命現象も様々で、目指している方向も同じではありません。ある研究者はコンピュータソフトの開発を行いますし、ある研究者は測定のための新しい実験手法の開発に専念していたりもします。

これらすべてを包括するような概念が図にあげたような「システムバイオロジー」であると私は考えています。

 

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2013-06-10 (月) 20:11:28

*1 発生を理解する場合には個体も対象となります