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出芽酵母でおこなわれた「ゲノムワイド解析」の例
英語のWikipediaより転載
(まだまとまっていません)
2系統ある。EUROSCARFから分譲されているドイツのグループによって作られたものと、OpenBiosystems?から発売されているアメリカのグループによって作られたもの。前者はURA3がマーカー、後者はHIS3がマーカー. 前者の作り方はここ。
かつて、出芽酵母のゲノム上のすべてのORF(蛋白質をコードしている領域)を増やすプライマーのセットが存在した。これを用いれば6000個のORFを、タグ配列付きで増幅することができる。タグ配列のプライマーで2nd PCRを行なえばお望みのベクターにGap-Repair法ですべてのORFをクローンすることができて、様々な「ゲノムレベルでの遺伝子解析コレクション」を作ることが可能だった。このプライマーセットは当時Research Genetics Inc.という会社が売りだしており、当時としてはプライマーを自分で合成するよりはずっと安い価格で手に入れることができた(私もかつて一度使った)。
ところが(?)、Research Genetics Inc.はInvitrogenに買収され、プライマーの合成もお手頃の価格になったせいか、あるいは様々な遺伝子解析コレクション自体*1が売りに出されているせいか、この商品はラインナップから姿を消してしまった。もう10年以上前に開発された物であり、時代遅れと言ってしまえばそうなのだが、この「遺伝子全部を扱う」という考え方、その有効なやり方までも失われてしまっているような気がしてならない。
以下は参考文献
・・・といった情報が1つにまとまったATCCのページがあった。
歴史をちょっと調べてみた。
出芽酵母 S. cerevisiaeとその近縁種のゲノム解析から、酵母のゲノムは太古に一度全体が倍化した痕跡が見つかっている。S. cerevisiaeには、よく似た遺伝子がペアで存在する(Paralogと呼ばれる)ことが多い事が昔から知られていたが、これがその原因の一旦である事は間違いないだろう。
以下の論文では、このWGDによって酵母のライフスタイル(酸素呼吸と発酵のどちらをより好むか)が大幅に変わった事、それに伴って遺伝子発現のプロフィール(転写制御のネットワーク)の大規模な再編成がおきた事を示している。
Ihmels J, Bergmann S, Gerami-Nejad M, Yanai I, McClellan M, Berman J, Barkai N., Rewiring of the yeast transcriptional network through the evolution of motif usage., Science. 2005 Aug 5;309(5736):938-40.
SGDでPseudogeneをサーチすると12個ほど候補遺伝子が出てくる。例としては、
遺伝子導入に使うべく、いろいろとMarkerを調べていた。pKT127などに入っている、spHIS5とかには変なプロモーターとターミネーターが使われている。いろいろ調べてみると、TEF promoterというのが使われてそう。で、これがなんの遺伝子かを探すのに一苦労した。
結局、A.gossypii TEF gene for translation elongation factor 1 alpha (EF-1 alpha)のプロモーターだった。 で、A. gossypiiだが、これが「Eremothecium gossypii is a pathogen that attacks cotton and some citrus fruits but also produces vitamin B-2」という、まあcerevisiaeとかに近い真菌ということらしい。
遺伝子が壊れたことを積極的に検出するマーカーのことをCounter Selection Markerと呼んだりする。
有名なところでは、URA3という遺伝子が壊れることで、酵母が5−FOA(フルオロオロチンサン)に耐性になるというものがある。Plasmidを排除したり、URA3マーカーを取り除いたりする時に使われる。
その他にCounter Selectionに使えるマーカー遺伝子としては、
X2180-1B | MATalpha SUC2 mal mel gal2 CUP1 | 慶応大学・西沢先生より | 2006.10 |
Brachmann CB, Davies A, Cost GJ, Caputo E, Li J, Hieter P, Boeke JD., Designer deletion strains derived from Saccharomyces cerevisiae S288C: a useful set of strains and plasmids for PCR-mediated gene disruption and other applications., Yeast. 1998 Jan 30;14(2):115-32.
HIS3以外はORFをすっぽり欠落させている。MET15は現在はMET17に名前が変更されているようだ(20140910)。
AEEQKLISEEDLL (Boldの部分がエピトープ) 9E10という抗体が有名
出芽酵母でSGDをサーチしたら、こいつがいちばんでかかった。559KDa!
YLR106C ORF: Verified MDN1 Huge dynein-related AAA-type ATPase (midasin), forms extended pre-60S particle with the Rix1 complex (Rix1p-Ipi1p-Ipi3p), may mediate ATP-dependent remodeling of 60S subunits and subsequent export from nucleoplasm to cytoplasm
Length(aa) 4,910 MW(Da) 559,302
ちなみにSWISSPROTに登録されているものでもっともでかい蛋白質は、
SYNE1_HUMAN (Q8NF91) Nesprin 1 (Nuclear envelope spectrin repeat protein 1) (Synaptic nuclear envelope protein 1) (Syne-1) (Myocyte nuclear envelope protein 1) (Myne-1) (Enaptin). pI: 5.38, MW: 1011041.95
1メガダルトン! だった。
この論文によると、合成培地の硫酸アンモニウムは、酵母の選択マーカーとして用いられるG418とClonNATを阻害するとのこと。MSGを用いるべし。"Because ammonium sulfate impedes the function of G418 and clonNAT, synthetic medium containing these antibiotics was made with monosodium glutamic acid (MSG) as a nitrogen source"
培地のレシピ
Guide to Yeast Genetics and Molecular and Cell Biology (Methods in Enzymology) Guthrie and Fink 編
これ。 0.2N NaOHで細胞を5分処理して、SDS-PAGE loading buffer中で煮るだけ。
ダグに頼まれて、遺伝子破壊をおこなうためのプライマーを設計したので覚え書き。
以下のページは参考 Saccharomyces Genome Deletion Project OpenBiosystems?
以下のプライマーでカナマイシン耐性遺伝子カセット(破壊株のゲノムもしくはプラスミドをテンプレートに)をPCRで増幅しターゲットと置き換える。
選択に用いるG418の濃度は200μg/ml
今回はURA3を破壊するので作らなければならなかったが、ほとんどすべての遺伝子はすでに破壊されているので、単純に破壊株のゲノムをテンプレートにして上流域と下流域のプライマーを使って破壊カセットを増幅すればよい(細胞周期関連遺伝子についてはこの方法で破壊カセットを取り出している)。
毎年7月終わりから8月はじめにかけて、アメリカとヨーロッパで交互に開かれる酵母研究者の学会がある。
アメリカでは、"200X Yeast Genetics and Molecular Biology Meeting(YGMB200x、あるいはYeast200xと略される)" と呼ばれ、シアトルとウィスコンシンで交互に開かれている。 ヨーロッパでは、"XXth International Confernce on Yeast Genetics and Molecular Biology"と呼ばれ各国で開催される。ヨーロッパ版は普段いけないような国でやるのでなかなかおもしろい。
酵母(ほとんどS. cerevisiae)研究の最前線がみれておもしろく、またアメリカとヨーロッパの研究志向も見て取れる。アメリカはどちらかというとモデル生物としての酵母研究色が特に濃く、ヨーロッパでは発酵研究の歴史を感じさせるような、少し応用よりの話もあったりする(概してヨーロッパの方がスポンサーが付きやすいようだ)。
最近酵母のゲノムワイドな論文を見ないなと思っていたら、12月入って2つほど出ていた。
一つは、Global analysis of protein phosphorylation in yeast、Nature。Yale大のM. Snyderのグループ。
もう一個は、Biochemical and genetic analysis of the yeast proteome with a movable ORF collection 、Genes & Dev。Rockefellerのグループ。
両者とも、1999年~2001年あたりに報告されたゲノムワイドなタンパク発現システムの高精度・高網羅度バージョン。
網羅的なタグ付き蛋白質の歴史はおもしろい。
まず、1999年11月、GST融合蛋白質の網羅的セットをRockefellerのEric M. Phizickyのグループが報告した。これはその当時、1年かけて生化学的手法により一つのキナーゼを同定していた私にとって革命的な出来事だった。これがいかに革命的かは、Marian Carlsonのレビューに詳しい。
ちなみにこのレビューでおもしろいのは、Kim Nasmythのコメントで、"The paper by Martzan et al. is very interesting – certainly, much more so than papers that describe the faster or slower growth of 2000 different yeast disruptants! ”という、明らかにゲノミクスで台頭していたM. Snyderの当時の仕事を引っ張り出して比べているところだ。
しかし、Snyderも負けてはいなかった(?)、2000年11月、GSTでキナーゼのみのセットでプロテインチップというものを作ることに成功。。さらに、2001年9月には全ORFでの構築を行い、プロテインチップを作成した。
ちなみに、2001年に渡米した私は、このSnyderのGSTキナーゼセットを使って、生化学的に一年かけて同定したプロテインキナーゼに2週間でたどり着き(もう一つ弱いキナーゼもとれた)、ちょっとむなしくなった。さらに遺伝学的な方法でもこれをつかってグルコース感知に関わるキナーゼの同定にも成功している。
渡米した当時、世界初の網羅的GSTセット・Phizicky Arrayは、Mark Johnston研では、"Crappy Array”と呼ばれていた。つまり作ったは作ったが、ちゃんとクローンができているか確認していない為、漏れがたくさんあってとても使い物にならないという見解だった。そのときSnyderのセットが発表された。これは、塩基配列決定をしてちゃんとクローンが入っている事を確かめ、蛋白質ができることもウエスタンで確認しているというもの。これは、Snyder Arrayと呼ばれてありがたがられていた・・・つまりSnyder逆転勝利!
で、今回、2人ともがなかよく共著者に入った新しいArrayが発表された。一つには未だにこういう努力がされていることに対して、「酵母も捨てたモンじゃないな」と感じるとともに、ちゃんと遺伝子が入っているかどうかも確認し、その情報を開示するという、今までに蓄えられたノウハウが入っているところに感心する。論文としてはGene & Devレベルにはなってしまってはいるが・・・。
それにしてもアメリカってなんで同じNIHのグラントつかってるのにこれほど国内で競争が激しいのだろうか。それがアメリカといえばそうなんだろうが。