必須な遺伝子と病気の原因遺伝子

「重要な遺伝子」という考え方に記載した話題と近い話題です。

ある学会で、ある先生が言いました。「私たちが大腸菌で扱っているこの遺伝子は、ヒトの病気の遺伝子として知られています。しかし、とても不思議な事に、大腸菌の生命活動には必須ではないのです。」

これを聞いてどう思われましたか?

これはよく考えてみると、全く不思議な事ではありません。必須の遺伝子が壊れたら、ヒトは生まれてきません。ですから病気の原因となる遺伝子は、壊れても大丈夫な必須でない遺伝子なのです。逆に言うと、必須でないから病気の原因遺伝子となりうるのです。

大腸菌のような微生物で、壊しても一見なんの問題も起こさない遺伝子はたくさんあります。ただ私たちは、その遺伝子が壊れた事によって微生物が受けている不利益を見る手段をもっていないだけなのです。ヒトは、命に関わらなくても、生活に支障をきたすような病気であれば、その不都合を訴えます。だから病気だとわかるのです。

最近、酵母のゲノムにある約6000の遺伝子のうち、3%を除く遺伝子が何らかの生育条件下で酵母の生命活動を正常に維持するために必要だという論文が発表されました*1

ヒトにとっては、生命活動に必須でないが、様々な生活環境で生命活動を正常に維持する遺伝子のすべてが病気の原因遺伝子となりうるはずです。

2008-11-06 (木) 00:00:00

研究


*1 参考文献:Hillenmeyer ME, Fung E, Wildenhain J, Pierce SE, Hoon S, Lee W, Proctor M, St Onge RP, Tyers M, Koller D, Altman RB, Davis RW, Nislow C, Giaever G., The chemical genomic portrait of yeast: uncovering a phenotype for all genes., Science. 2008 Apr 18;320(5874):362-5.