抑制遺伝子IkappaB導入によるNFkappaBの抑制は、実験肺移植手術後の虚血再かん流傷害を改善する
Ishiyama T, Dharmarajan S, Hayama M, Moriya H, Grapperhaus K, Patterson GA., Inhibition of nuclear factor kappaB by IkappaB superrepressor gene transfer ameliorates ischemia-reperfusion injury after experimental lung transplantation., J Thorac Cardiovasc Surg. 2005 Jul;130(1):194-201.


 

この論文は私の、あるいは私が所属していた研究室の論文ではありません。研究内容も私が直接関わっていたものとは全く違います。私は4番目の著者ですが、私にとっては他の論文とは違った意味でとても意味のある論文です。

この論文の筆頭著者(石山氏)は、それまで日本で新潟大学で外科医をやってらして、ワシントン大学医学部の肺の移植手術で有名な研究室に留学されていました。そこで彼は、ラットを使って肺の移植実験を行っていました。移植する前の肺に、炎症を誘発するNFkappaBの働きを抑える遺伝子を導入することで、移植時におきる虚血再かん流傷害(血液を止めた後に再び血流をおこさせることで生じる組織の傷害)を防ぐ効果があるかどうかということを調べていました(結果としてその効果があったのでこの論文となったわけです)。この研究は将来的に人での肺移植を視野に入れたものであることは言うまでもありません。

彼は日本ではほとんど実験の経験がなかったので、肺サンプルの生化学実験(ELISA)で手こずっていました。私は彼と同じアパートメントコンプレックスに住んでいて一緒にテニスをしたりパーティーをしたりしていた仲だったので、彼の仕事を手伝う(実験を教えてあげる?)ことになりました。実験はうまくいき論文にまとめることになりましたが、その時もいろいろとアドバイスしました。

この経験は私にとってとても意味のあるものでした。まずこれは、どんな遺伝子をどんな風に医療に用いるのか、その効果、その評価方法などをじかに見る良い機会になりました。私はそれまで「生命現象の基礎的部分を明らかにする」という目的で様々に遺伝子を扱ってきましたが、遺伝子が医療にどのように応用されうるのかということを直に経験する機会はありませんでした。次に、自分の目的のために研究を続けてきて身につけた知識や技術が、他の人の研究の手助けになるんだという喜びを感じることが出来ました。さらには、実際に彼が使っていた遺伝子の制御システムを勉強することで異分野の知識が広がりましたし、私が酵母で研究していたグルコース感知系との類似点を見つけることもでき、自分の研究の位置づけを高めることもできたと思います。

これらは私にとって非常に大きな財産になっています*1。この論文に私の名前が入っていることは、私にとって単なる業績とは無関係に大きな意味があるように思います。

 

成果発表/論文発表のページへ

2008-04-05 (土) 00:00:00

*1 もちろん彼との交友もそうです