Gap-Repair cloningを使おう!

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Gap-Repair cloningを使おう!

このページでは、簡便・高効率・安価なDNAクローニング法、Gap-Repair Cloningについて解説します。この手法は従来の制限酵素を用いたクローニングのややこしさをすべて解消する画期的な実験手法です。もし従来の制限酵素を用いたクローニングを行っている方でクロー(苦労)されている方は、まずはぜひこちらをご覧ください。

はじめに

出芽酵母の細胞内では相同組み換えの活性が非常に高く、25bp程度の相同領域があれば相同組み換えがおきてDNA断片が連結されます(正確には「組み換え修復機構」によって連結されます)。この活性を利用して、酵母細胞内で様々なプラスミドのコンストラクトを構築することができます。これを「Gap-Repair Cloning」と呼びます。

酵母を使ったGap-Repair Cloningは低コスト・高効率で、自由度が高く複雑な構造のプラスミドの構築も可能な、非常に便利な手法です。ただ一般の研究者にはあまり知られておらず、また酵母を用いるということで多少敷居が高いと思います。そこで酵母研究者以外の方が酵母のGap-Repair Cloningを導入するかどうかを判断される材料になればと思い、ここに解説をのせることにしました。

#本ページでは、Gap-Repair CloningをGRCと略させていただきます。

GRCの特徴(メリット)

GRCの特徴(デメリット)

もちろんGRCにもデメリットがあります。

GRCを行うには

以下に、実際にGRCを行うために必要な道具立てを書きます。

以上が整った上でのGRCの手順です。実際の実験の流れは図をご覧ください。

 
GRC1.png
 
  1. 組み込みたいDNA(インサート)を用意する。
    両端に、ベクターと相同な25bp以上の領域*1をもつDNA断片を準備します。PCRで行うのがもっとも一般的かと思います*2
    • 3の形質転換で、それをそのまま(未精製で)用いる。
  2. 組み込まれるベクターを用意する。
    ベクターを制限酵素で消化します。組み込みたい領域の内側であればどこで切断されていてもいいです*3。以下はTipsです。
    • ベクターは、2カ所以上で切断した方がバックグラウンド(セルフライゲーション)が低い。
    • ベクターは、制限酵素で1日以上消化したものの方がバックグラウンドが低い(4℃保存)。
    • 熱処理や、アルカリフォスファターゼ処理は不要。
  3. 1と2を混ぜて酵母を形質転換し、プラスミド用の選択マーカー(一般的には栄養要求性)で形質転換体を選択する*4。このときベクターのみをコントロールとして形質転換しておけばどれくらいの効率でインサートが入るのかを評価することが出来ます。
  4. 生えてきたコロニーを培養し、プラスミドをリカバー、大腸菌に形質転換し直してプラスミドの構造を確認する。

GRCの活用事例

GRCは様々に応用できます。例えば以下のように用いれば、部位特異的変異を非常に簡単に導入できます。

GRC3.png

その他、以下のような用途があります。

GRCのその他の解説と関連情報

最後に

GRCは非常に自由度の高いDNA構築系です。従来の制限酵素ーライゲーションの系や、Gateway Cloningのような、制限酵素部位や組み換え配列の制約を一切受けません。したがって、非常に自由に思い通りのデザインでDNAを操作することが出来ます。「バカでもできる」と書きましたが、これはつまり作成したいコンストラクトのデザインに上記の制約のせいで「頭を悩ませる必要がない」ということを意味します。GRCを活用して「あっと驚くコンストラクト」を作成してみませんか?

FAQ

「最後に」の後ですが、GRCについていくつか疑問にあがりそうなことを書いてみました。その他ご意見ご質問等ありましたら、下記コメント欄にお書きください。

 

最終更新
2017-08-26 (土) 18:05:44


*1 もっと短くても良いという人もいます。これは最適化されたものではありません
*2 私たちはPCRを50μLの系で、正確性の高いPCR(KODplusなど)で行っています。
*3 私たちは、ベクターは通常ミニプレップしたもの(50μL)を10μL用いて、50μL中で制限酵素消化したものを用いています。
*4 私たちは、通常約300μLの形質転換溶液の中に50μLの(1)と2μLの(2)を混ぜて形質転換しています。
*5 例えば、http://proteome.wayne.edu/RecombCloning2.pdf 
*6 例えば、Wang L, Kao R, Ivey FD, Hoffman CS., Strategies for gene disruptions and plasmid constructions in fission yeast., Methods. 2004 Jul;33(3):199-205.

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Last-modified: 2017-08-26 (土) 18:05:44