まず蛋白質のダイナミクスに関する単純な例から始めましょう。合成と分解(Figure 1a)、リン酸化と脱リン酸化(Figure 1b)です。質量作用の法則(law of mass action:MA)を用いて、これら2つのメカニズムを以下のように書くことが出来ます。
#このページにいきなり現れた数式を見て思考が止まりそうになった方は、Tyson2003の解説をまずお読みください。
(a)では、S は信号の強さ(例えばmRNAの濃度)で、R は応答の大きさ(例えば蛋白質の濃度)を表します。(b)では、RP は応答する要素のリン酸化形態(活性化状態と考えます)、RP は、RP の濃度で、 RT (= R + RP) は応答要素の全濃度を表します。
定常状態(反応が進んで R の変動がなくなった状態)では、 dR/dt( R の変化率)は定数( Rss )で 0 となります。今回の場合は以下のようになります。
これらの式はFigure1abに見られる線形(liner)と双曲(hyperbolic)の信号-応答曲線を描きます。多くの場合、この単純な要素はより複雑なパスウェイに組み込まれ、より複雑な(実際の生命現象に近い)信号-応答曲線を構成するのに用いられます。
これらのグラフは、ネットワークの模式図(左)、速度(中央)、信号-応答曲線(右)を表しています。今後も特に述べた場合を除いて同様な順序となっています。
中央のグラフで、実線は応答要素(R・RP )の消失速度で、点線は様々な信号強度下での合成速度を表しています。S の値は線の横に記されています。黒丸は合成と消失の速度が一致したところで、応答の定常状態値を表しています。右の列には様々な信号強度に対する応答の定常状態をプロットしています。