Figure1aでお見せした簡単な線形信号応答要素を、Figure1dの分子種 X を介して第2の信号伝達経路に追加することで、信号に対して完全適応する反応機構を作ることが出来ます。
完全適応(perfect adaptation)とは信号の強度変化に対して一過的な反応を示すものの、その定常状態の反応 Rss は、信号 S とは無関係であるという現象を表します。走化性(chemotaxis)システムはこのような振る舞いをする典型的な例です。このシステムでは、誘因物質や忌避物質の急激な変化に反応し、その後信号のレベルが一定になると安定した適応状態となります。私たちの嗅覚はこのような方法で機能しているので、このようなタイプの反応を「(匂い)探知機(sniffer)」と呼ぶことにします。
Figure1bでお見せした双曲形の要素も、反応を下げようとする第2の信号伝達経路を付加することで完全適応にすることが出来ます。Levchenko と Iglesia (31) はこのような機構を用いることで細胞性粘菌や好中球のホスホイノシチド信号伝達をモデル化しています。
その他、沢山の研究でこの完全適応を用いたモデルが提示されています (32-35) 。