Tyson2003/Page9

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空間における信号伝達†

ここまではすべて時間依存的な信号伝達についてのみ考慮してきました。しかし、細胞の生命活動には空間的な広がりを持つ信号伝達も重要な役割を果たします。たとえば、細胞の凝集、体節形成、細胞分裂面の局在などです。興味深いことに、振動をつくるいくつかのメカニズムは空間パターを形成することが出来ます。つまり、自己触媒と負のフィードバックの組み合わせによって、時間が経過するとにともなって空間における対称性を失うのです (55, 56) 。これによって2つの模様が生じる可能性があります。もし阻害因子(あるいは基質)が活性化因子よりもはるかに速く拡散すると、活性化因子は空間の局所で蓄積し、時間に依存しない安定状態の模様を作ります。一方、阻害因子(あるいは基質)の拡散定数が活性化因子の拡散係数と同じ(もしくはより小さい)と、活性化の進行波(traveling wave)が媒体の中を伝搬していきます。

定常状態のパターン(一般的に「チューリングパターン(Turing pattern)」と呼ばれている)は、たくさんの、時間とは無関係な生物の繰り返し模様に関わっていると提唱されてきました。例えば動物の表皮の模様、葉の原基の位置決定、毛根細胞の分布などです (57) 。Dictyosteliumアメーバ細胞集団での環状AMPの進行波は凝集、移動体(slug)の運動性と子実体形成の過程を支配しています (58, 59)。

Meinhardt と Boer は大腸菌(Escherichia coli)の分裂面の局在化についてすばらしいモデルを提唱しました (60) 。このモデルでは、細胞膜に結合したFtsZ蛋白質が、細胞質内を自由に拡散できるFtsZをどんどん自分に結合させていきます。チューリング型の対称性の崩壊により、この相互作用は大腸菌の軸にそった任意の位置にFtsZリングを形成します。Min蛋白質(MinC、D、E)蛋白質どうしの相互作用は極から極への振動波を形成し、これがFtsZリングを細胞の中心に形成させるバイアスとなります。

 
 
2008-04-08 (火) 00:00:00

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Last-modified: 2008-04-08 (火) 00:00:00