出芽酵母の細胞内では、相同組み替えの活性が非常に高く25bp程度の相同領域があれば、相同組み替えがおきてDNA断片が連結されます。この活性を利用して、酵母細胞内で様々なプラスミドのコンストラクトを構築することができます。これを「Gap-Rapeir Cloning」と呼びます。~

酵母を使ったGap-Repair Cloningは自由度が高く、低コスト・高効率で、複雑な構造のプラスミドの構築も可能な、非常に便利な手法です。ただ酵母を用いるということで一般の研究者には多少敷居が高いと思います。そこで酵母研究者以外の方が導入するかどうかを判断される材料になればと思い、ここに解説をのせることにしました。~

#本ページでは、Gap-Repair CloningをGRC、Gateway CloningをGWCと略させていただきます。

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**1. GRCの特徴(メリット) [#o8267f7d]

-高効率~
ベクターを熟成(?)させれば、90%以上の確率で組み替えがおきたプラスミドが得られます。

-長い断片を利用できる~
酵母への形質転換では、大腸菌のように長い断片が入りにくいということがありません。15kbくらいのプラスミドは平気で扱うことが出来ます。

-クローニングに用いる制限酵素部位をあれこれ考える必要がない~
制限酵素部位をクローニングに用いませんので、制限酵素部位の情報を細かく知る必要がありません。利用する制限酵素について頭を悩まさなくてもいいのです(これは実は非常に大きなメリットです)。いうなれば&color(red){「バカでもできるクローニング」};です。

-(市販の)特別な酵素溶液を準備する必要がない。~
これが低コストの要因になります。

-クローニングに用いるDNAを精製する必要がない~
PCRや制限酵素で処理したDNAをそのまま酵母に形質転換しても効率はほとんど変わりません。

-クローニングに用いる塩基配列は何でも良い。~
GWCでは相同組み替えに特定の配列しか使えません。GRCはどんな配列を選んでもいいのです。これも「バカでも・・・」の特徴の1つです。

-置換や欠失なども作成できる~
上の特徴を利用すれば、特定の塩基を置換したり欠失させたりも出来ます。

-複数の断片を結合できる。~
とにかく特異的で相同な25bp程度の相同な配列を見つけさえすれば、複数のDNA断片が結合できます。4断片くらいならば平気でつながります。

-酵母の表現型で選択することができる~
これは酵母研究者だけのメリットかもしれませんが、変異株の中でGRCを用いてプラスミドをクローニングすれば、「変異株を相補するかどうか」といった指標によって組み替えプラスミドをもった酵母を選択することが可能です。


**2. GRCの特徴(デメリット) [#kdc3b226]
もちろんGRCにもデメリットがあります。

-酵母を使えなければならない~
これが一般の研究者にとってもっとも大きな敷居だと思います。酵母は大腸菌が扱えればだいたい培養することは可能ですが違いもあります。ちなみにTwo-Hybrid Systemで酵母を使えているならば、GRCでの酵母の扱いはまったく問題ありません。[[一部培養細胞を使っている研究室では、酵母は著しく嫌われているようです。:http://yeast-forum.org/http://yeast-forum.org/YGSJwiki/index.php?ML%A4%CE%C5%EA%B9%C6%A4%AB%A4%E9#j13deffa]]そのあたりの事情も加味する必要があるかもしれません。

-時間・手間がかかる~
酵母でクローニングするために、酵母が生えてくるまでの3日ほど余計に時間がかかります。また、プラスミドの構造を確かめるためには酵母からプラスミドDNAをリカバーして大腸菌に形質転換し直してやる必要があります。ただしクローニングに用いるDNA精製に手間がかからないことや成功率が高いことを考慮すると結局GRCの方が早いのではないかと思いますが。

-プライマーが長くなる(コスト)~
制限酵素でのクローニングよりは多少プライマーが長くなります。これもDNA精製のコストと相殺されるように思いますが。

**3. GRCの実際 [#a0ff1607]

#ref(http://hismoriya.com/HMwiki/media/GRC1.png,wrap,720x540,50%)

#ref(http://hismoriya.com/HMwiki/media/GRC3.png,wrap,720x540,50%)

-PCR産物、ベクターとも精製する必要はない。PCRのあと、もしくは制限酵素で切断したものをそのまま酵母の形質転換に用いる。
-PCRは50μLの系で、正確性の高いPCRで行ってる(KODplus)。それをすべてを形質転換に用いる。
-ベクターは、形質転換が行われる為の領域の内側であればどこで切断されていても良い。
-ベクターは、2カ所以上で切断した方が効率がよい。
-ベクターは、制限酵素で1日以上消化したものの方がセルフライげーションがすくない(4℃保存)。
-ベクターのみをコントロールとして形質転換すると良い(インサートを加えたものに比べて出てくるコロニーが非常に少なければ成功)。
-ベクターは、ミニプレップしたもの(50μL)を10μL用いて、50μL中で制限酵素消化したものを、2μL用いている(形質転換の効率により調整)。

**4. GRCの活用事例 [#w2b94e1f]

**5. GRCのその他の解説[#tb3f5d1f]
-[[佐賀大学・永野幸生先生のページ:http://www.iac.saga-u.ac.jp/lifescience/researches/research2.htm]]~
「GRCをやりたいが、酵母用のベクターを持っていない」という方に朗報です。永野先生らの「ヘルパープラスミド」を用いれば、酵母用のベクターでなくてもインサートと酵母用の複製起点とマーカーを同時にGRCすることが出来ます。このページはGRCについて詳細にかかれていますので大変参考になると思います。~


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