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*はじめに [#e0305ee6]
20年前の組み替えDNA技術の開発以来、分子生物学者は生命現象の分子メカニズムを詳細に記述することに大きな成功をおさめています。これらのめざましい例としては、ファージの溶菌-溶原化スイッチ (1) やバクテリアの走化性 (2) 、酵母の細胞分裂周期 (3)、ショウジョウバエの発生における体節パターン形成 (4) 、ほ乳細胞の信号伝達経路 (5) などがあげられます。これらの研究で記述されている情報を図式にして描画すると、分子ネットワークは現代の電子機器の配線図に非常によく似ています。配線によってつなぎ合わされた抵抗やコンデンサ、トランジスタの代わりに、遺伝子や蛋白質、代謝物質が生化学反応と分子相互作用によってつなぎ合わされていると見なすことも出来ます。電気工学者がラジオをモデル化するのと同じような方法で、生命現象の制御システムを数学的に記述して理解出来るのではないかという考え方は非常に魅力的です  (6) 。ここであげた例ではすでにこのような方法による数理モデリングの端緒となる研究が始まっています (7-15)。

これらのモデルがどのように作られていてどのように動くのかを理解するためには、分子回路の的確な数学的記述法と、制御ネットワークのダイナミックな特性についてある程度直感的に理解できている必要があります。電気回路のようでもある複雑な分子相互作用ネットワークは、比較的シンプルなモジュール(個別の役割を担っている遺伝子と蛋白質の複数のセット)が、標準的な方法でつなぎ合わされて出来ているように見えます (16) 。

この解説では単純な信号応答経路がどのように正と負のフィードバックを用いてネットワークに組み込まれ、より複雑な振る舞いを生み出すのかを紹介します。例えばトグルスイッチや振動子は、非線形制御システムが生み出す奇妙でダイナミックな振る舞いの基本要素です。この解説の目的はこれらの現象を表現するための的確な語彙と、いくつかの覚えておくべき実例を紹介することにあります。

この解説とは別の視点から見た優れた総説は参考文献 17-25 を、書籍については参考文献 26-29 をご覧ください。

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