Hsp90ストレスは異数性を誘導し、細胞の急速な適応を可能にする。

Hsp90 stress potentiates rapid cellular adaptation through induction of aneuploidy.

Chen G, Bradford WD, Seidel CW, Li R. Nature. 2012 Jan 29;482(7384):246-50. doi: 10.1038/nature10795. PMID:22286062

Hsp90は分子シャペロンの1つですが、進化学上非常に興味深い分子であるとされています。それが「進化的キャパシター」というもので、「安定な環境下では、潜在的でマイナーな変異による蛋白質の機能損失をHSP90が最小限にとどめ、生存に不利益な環境になった時にこれを一気に解放して表現型の多様性を生みだす」、というものです。

キャパシターとは、日本語ではコンデンサーといわれている電子部品で、電気を溜め込んで放出するという特性があります。この働きに似ているのでキャパシターと名付けたという訳です。

さて、この論文では酵母において、そのHsp90の機能を阻害すると染色体分離の異常が引き起こされて、異数体が高頻度で生じてしまうことをまず見いだしています。Hsp90は染色体分配に関わるキネコア蛋白質のシャペロンとして働いているので、この異常が異数性を生んだようです。

そうしてできた異性体の集団はいろいろな組み合わせの染色体を持っています。酵母の2倍体酵母の32本の染色体のうち1本が失われていたり、1本が増えていたり・・・。そして、その集団を特定の薬に晒すと、その薬の作用によって特定の染色体の組み合わせをもった細胞が選択されてきました。つまり、異数性のおかげで(薬剤存在下という)環境に適応できる細胞が生まれてきたのです。

異数体は通常の条件では増殖が遅くなることが分かっています。薬剤環境に適応した異数体をもとの薬のない環境に戻してやると、染色体の組み合わせがもとの野生型に戻った細胞(正倍数体)が現れました。

このようなことから筆者らは、Hsp90が環境のセンサーとして働き、ストレス環境でHsp90の機能が下がることで異数体集団が生まれ、それがストレスにより選択をうけることで種が適応し、また環境が戻ると急速にもとの正倍数体に戻るようなシステムがあるのだろうと結論しています。

染色体の数を変えて環境に適応する仕組みがあるというのは大変面白い考えで、それを制御しているのがキャパシターであるHsp90だというのです。Hsp90天晴れ!?

 

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