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2012-01-242021-06-11

論文の図とレジェンドに見る悪しき伝統

学術論文を読んだり書いたりしていてイライラさせられることがあります。それは、図(Figure)とその説明文(Legend)に見られる悪しき伝統です。

以下の例を見てください。

図1. Condition 1とCondition2における、Gene AならびにGeneB破壊の効果。1はGeneA、2はGeneB、3はコントロールである。青色はCondition1を緑色はCondition2を表している。

次にもう1つの例です。

図1. Condition 1とCondition2における、Gene AならびにGeneB破壊の効果。

ぱっと見てすぐに理解できるのは、明らかに下です。上では、図と説明文を交互に見なければ中身が理解できません。下ならば、その図から視線をはすす必要がありません。

さてこの2つの図、どちらが学術論文として「正しい」のでしょうか?

上のような書き方は学術論文で非常に良くみます。特に古い論文ならばほぼ上でしょう。だから現代でも上であるべきなのでしょうか?

私はこの上のような図が、作図に大きな制限があった時代の「悪しき伝統」であり、現在上のような図の見せ方をする事は全くのナンセンスである思うのです。

これは、昔の人たちがパソコンがなかった時代にどのようにして作図をしていたのかを思い起こせば良いでしょう(私も少しやったことがあります)。グラフや写真に文字を入れこむのは、多くの場合、文字のシールを張り込むという、非常に手間のかかる作業でした。

そうなると複雑な単語をグラフや写真の中に埋め込む事は非常に困難です。ですから、簡単な文字のみしか、図のなかに埋め込めなかったのです。そして、その足らない情報を説明文で補っていたのです。

現在、学術論文をパソコンを使わずに作っている人はいません。そして、その図ももちろんパソコンの描画ソフトを使って作っています。図の中に文字を入れこむ操作に何の制限もありません。したがって、この現代において上のような図を作る正当な理由はなにもないのです。

・・・ということで、私は上のような「理が通っていない」図を見せられると非常にイライラするのです。もちろん、図の中にやたらと小さな文字を書き込んで、図が見にくくなったりごちゃごちゃするというのは避けなければなりませんが。

ーーーー

2021.6.11

コメントを頂いたので補足しておきます。

このエントリーは、「レジェンドの情報量をできるだけ減らせ」という意図で書いたものではありません。図そのものとレジェンドで同じ情報量を与えるなら、読者の視線を無駄に動かさせない工夫をしましょうという意図で書いたものです。

レジェンドは、簡潔であればあるほど良いというものではなく、その図を理解するために必要十分な情報が提示されていなければなりません。レジェンドだけを読んでも図が解釈できず、本文を読まないと図の内容が分からないというのも良くないレジェンドです。

ただ、レジェンドでデータの内容・解釈まで説明するのは行きすぎで、それはリザルトの本文に書かなければなりません。・・・そうなってくると「論文の書き方」の話になってくるので、ここではこれ以上解説はしません。

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Comments (2)

  1. と より:
    2021-05-25 10:39 AM

    一方で、図表と本文は切り離して、図表は独立して意味をなすように、という指示を持つ学会もあります。ご指摘の趣旨は図中に挿入可能な凡例までキャプションで済ますな、というご主旨と理解した上で、すっきりがよい、というものでもないので、その旨、ご補足いただくと、より、趣旨が明確に伝わるように思います。このままでは、語彙がなく言葉少なく手抜き大好きな就学生が単純に言葉通り、「すっきり」したほうがよいと都合よく曲解してしまうかもしれません。説明には、図を補足する研究者の解釈や意味を補足するほうがよりよくご主旨が明確になると思います。いかがでしょうか。

    返信
  2. MoriyaHisao より:
    2021-06-11 8:26 AM

    コメントありがとうございます。

    このエントリーはレジェンドの書き方を指南したものではありませんが、確かにそう解釈される学生さんもいらっしゃるかも知れません。

    「と」さんがご指摘の点は、私も論文の執筆指導の時にはいつも学生に言っていることです。ただその点は、論文の書き方の根本的なところの1つで、単純な文章で伝えるのは難しく、実地でのトレーニングがある程度必要なのかなと思います。

    ご意見を受けて、補足を付け加えました。ご意見を頂ければ幸いです。

    返信

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