負のフィードバックは、酵母の転写因子制御に「変異に対するロバストネス」を付与する。

Negative feedback confers mutational robustness in yeast transcription factor regulation.

Denby CM, Im JH, Yu RC, Pesce CG, Brem RB. Proc Natl Acad Sci U S A. 2012 Mar 6;109(10):3874-8. Epub 2012 Feb 21. PMID:22355134

生命システムは、一般的にロバストにデザインされていると考えられています。何かのシステムが「ロバストである」という場合には、「どのシステムが、どんな機能を維持する能力が、どんな摂動に対してロバストか」を定義しなければなりません。

生命システムの場合には、よく知られている擾乱は、「環境の変化」「変異」「生化学反応のゆらぎ」の3つがあります(これらは実は全部あわせて「細胞内パラメータの変動に対するロバストネス」といっていいと私は思っていますが、それはまた別の話・・・)。

この論文では、転写制御によく見られる負のフィードバックが、「変異に対するロバストネス」を転写制御システムに与えているという話です。

まず、この論文では実際に酵母内で働いている転写因子の負のフィードバック(負の自己制御)を実験により探しました。転写因子のヘテロザイガスKO株や、過剰発現株をつかって、「自身の発現量が、自身の発現に対して負に働いている」転写因子を同定しました。

これで最も顕著な負の自己制御をしていたのが、Rox1という転写因子でした。次に、著者らはこの負の自己制御を破壊する実験を行ないました。負の自己制御の破壊は、Rox1が自分のプロモーター領域に結合する配列を壊してしまう事により達成します。

この時、著者らはとても面白いことをしています。Rox1は、転写抑制因子なので、自身の結合部位を破壊しただけだと単に転写抑制が外れて強く発現してしまう(定常状態の発現量が高くなってしまう)ので、それをフィードバックがある時と同じ量にするために、レポーター蛋白質であるGFPのコドンを「非最適化」しました。この操作は、GFPの合成(翻訳)速度を下げることになります。

Fig.3でその結果が示されているのですが、これが見事、Uri Alonの「An Introduction In Systems Biology」に記載されているNegative Autoregulationの効果、つまり「Response time をあげる」というグラフを再現しているのです。ただ、著者はその事実について全くといっていいほど言及指定なのですが・・・。

それよりも著者らが打ち出したかったのは、タイトルにある通りFig.4の結果で、このFeedbackを壊したら、変異に対して影響を受けやすくなるということです。「いろいろなバックグラウンドの出芽酵母の株でこのフィードバックを壊したらGFPの蛍光のバリエーションが上がった」、というものです。

残念ながら(?)、私はこの結果だけではかなり消化不足です。例えば積極的にゲノムの様々な部位、あるいはROX1の遺伝子発現制御系に様々な変異をいれて、その結果がフィードバックを壊した時にどれくらい顕著にでるか、という実験をすべきであると思います。

その後のFig.5では、「負のフィードバックをもつ転写因子は過剰発現するとToxicになりやすい」、というちょっと本題と関係ない話になってこの論文は終っています。そう言う訳で、タイトルのことを言い切ってしまうには「証拠不足」な感は否めないのですが、少なくとも前半の部分、試みとしてはとても興味深い論文でした。

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