遺伝子発現は円を描く。mRNA分解に関わる因子はmRNA合成も手伝う。

Gene expression is circular: factors for mRNA degradation also foster mRNA synthesis.

Haimovich G, Medina DA, Causse SZ, Garber M, Millán-Zambrano G, Barkai O, Chávez S, Pérez-Ortín JE, Darzacq X, Choder M. Cell. 2013 May 23;153(5):1000-11. doi: 10.1016/j.cell.2013.05.012.

ちょっと前にCellにでた論文です。別の調べ物をしていて見つけました。

この2〜3年、酵母でmRNAの合成速度と分解速度をグローバルに調べた仕事がいくつか報告されました(PMID21206491、21680716、21931566など)。さらにその発展としてmRNAの合成や分解に関わる因子に変異を入れて合成速度と分解速度を変化させても、大多数のmRNAの発現量(細胞内の存在量)にあまり変化がないということが見出されました(PMID22466169、21811398など)。

この事実は、mRNAの合成と分解が何らかの形でカップルしていて、それぞれのプロセスに多少の異常があってもmRNAの存在量をある程度一定に保つ機構が働いていることを意味しています。mRNAの発現量を、変異やノイズなどの擾乱にも関わらず安定に保つという、ロバストネスを保証する機構だと言えます。

この論文ではそれがどのような分子メカニズムで達成されているかを示しました。

結論から言ってしまうと、mRNAの分解に関わる因子が転写の活性化にも関わっているということでした。mRNAの分解は細胞質の分解酵素によって行われますが、これが核にも入ってきてmRNAの合成も手伝っているようです。

実はこの発見は私には個人的に感慨深いものでした。

私は昔この論文にも出てくるmRNAの分解に関わるあるタンパク質の研究をやっていました。ただ当時は何をするタンパク質かは分かっていませんでした。当時分かっていたことは、このタンパク質はどうも転写の活性化(mRNAの合成)に関わっているらしいというものでした。

ところがその後にそのタンパク質は細胞質でmRNAの分解に関わるという論文がCell誌に発表されました。その内容は首尾一貫していて矛盾もなく合点の行くものでした。

そうなると私たちが見ていた転写の活性化は何だったのか?ということになります。転写活性化にもmRNAの分解にも関わる多機能性タンパク質? そんな矛盾した機能を持つタンパク質があるのか? 私はその後そのタンパク質の研究からは離れてしまったのですが、これはずっと引っかかっていました。

そして、この論文がそれをすべて解消してくれました。

mRNAの発現量を安定に保つために最も良い方法は、合成と分解をカップルさせること、合成と分解を同じ因子でやること!

これは生命システムのロバストネスの観点からみれば実に合点がいくものです。シミュレーションしてみればすぐに分かること。理論的な予測も可能だったかもしれません。ですが、こういうシステムレベルの特性も、結局は生物学実験から見つかってくるんですね。分子メカニズムは実験しないと明らかに出来ないですし。

 

(Visited 191 times, 3 visits this week)

6 Comments

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください