2013-09-062014-04-21 書籍:酵母 生命研究のスーパースター [amazonjs asin=”4864740127″ locale=”JP” title=”酵母 生命研究のスーパースター (静岡学術出版理工学ブックス)”] 先日このブログで「酵母の生命科学と生物工学」を紹介しました。その時にAmazonで酵母関係の新刊を探してみたら、でてました! 静岡大学の丑丸先生が書かれた本です。表紙にある可愛らしいイラスト。 早速購入して読んでみました。 「酵母 生命研究のスーパースター」というタイトルですが、中心的に説明されているのは(酵母の)細胞周期です。細胞周期の各イベントでどんなことが起きているか、G1、S、G2、Mと分けて解説してあります。それに関連して、TORシグナリングやオートファジー、アポトーシスなどのメカニズムの解説してあります。 実は、かなり最先端の内容も入っていて私も勉強させてもらうところがたくさんあったのですが、とても軽快な文章で、時々面白い例え話があったり、細胞の中で起きている現象について可愛らしいイラスト(学生さんが書いたのだとか)で解説してあるのでとても楽しく読み進めることができます。 楽しく読み進めながら一方ではかなり複雑な最先端の話題が含まれている。これはなかなかのことです。さらに酵母だけではなく、それに関連した哺乳類の細胞で分かっていることも詳しく説明してあるので、酵母の研究者に限らず細胞周期関係の研究をしている人にも役に立つのではないでしょうか。 恐らく楽しく読める理由に、「分子がどのように働いているか」という疑問だけではなくて、「なぜそのような機構になっているのか」という疑問とその答え(あるいは仮説)が色々と散りばめられているからでしょう。 その辺の指向が実は私には非常にぴったり来ました(私の講義でもそれを心がけています)。 書かれている内容の参考文献はないし、かなり断定的な、でもリラックスした文章で書かれていますので、専門書なのかどか微妙なところです。学部の3年生の講義をアレンジしたものとのことですが、細胞周期の研究を知りたい若い人(学部生や大学院生)、分子生物学は理解しているが細胞周期には詳しくない研究者などがこの本の対象になるのでしょう。 この本は実は二部構成になっていて、本の大半である一部が丑丸先生による細胞周期の話なのですが、二部に「酵母の数理」という、酵母の増殖や寿命に関する数理モデルの話が入っています。 一部が可愛いイラストと共に進む酵母を中心にわかってきた細胞周期の分子機構の詳細であるのに対して、二部は数式と生データから進む数理モデリングの話となっています。一部だけにして価格をもう少し安くしていれば、まとまりの良いいい本になったのにと思いました。 Share on FacebookTweet(Visited 672 times, 1 visits this week) 書籍 細胞周期 酵母