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2018-01-042018-01-04

Cas9は試験管内でもDNAを(めっちゃ)切る!?

CRISPR-Cas9によるゲノム編集技術、近いうちに間違いなくノーベル賞をとる革新的技術です。我が酵母においても、この技術を使って盛んにゲノムの大規模な編集が行われ、毎日のように論文が出ています。私も一応この実験系を動かしてみてメリットを実感しました。・・・ですがそれだけ。もともと相同組換え活性が強く、ある程度思い通りのゲノム操作ができる酵母では、今のところCRISPR-Cas9を使う必然性は感じていません。この技術日進月歩なので、成熟して「枯れた技術」になるまでしばらく様子を見ようと思っていました。

ところが、あるとき研究者仲間のNYさんから「Cas9、in vitro(試験管内)でもDNAをめっちゃ切りますよ!」と教えていただきました。「めっちゃ切る」という表現はあんまり科学的ではないですが、なんかすごく使える酵素感満載です。

試験管内でCas9を使って何ができる(何がしたい)のか? DNA上の狙った部位を切断できます。私たちの用途では、プラスミドの特定の部位を切断したい。私たちは Gap-Repair Cloning という方法で、酵母の相同組換え活性を利用してプラスミドを構築するのですが、この時、繋げるプラスミドを直鎖状にする必要があります。切りたいところに制限酵素の切断部位があればそれを使えば良いのですが、いつもうまいことそこにあるわけではありません。次の手段(そしてよく使う手段)として、プラスミド全体をPCRで増幅し直鎖状にします。こうすれば、ほぼ自由にプラスミドを構築することが可能なのですが、長いDNAがPCRで増えにくかったり、PCRによるエラーが生じたりする懸念があります。

そこでCas9です。切りたい部位を指定するガイドRNA(gRNA)を作ってCas9と混ぜてやれば、カスタム制限酵素の出来上がりです。確かに言われてみればそうなのですが、精製した酵素が試験管内でバリバリ働く(めっちゃ切る)かどうかは、酵素の活性や安定性も関係するので、そう簡単な話ではありません。

前置きが長くなりましたが、そういうわけで、Cas9を使ってプラスミドを切ってみました。

このエントリーはそのレポートです。結果としては、割と適当にやりましたがCas9はプラスミドをちゃんと切ってくれました。


さて、まずは材料です。Cas9とgRNAの作成キットは、かのNEBから販売されています。Cas9は小ロットで20回分9,500円。gRNA作成キット20回分72,000円。これに加えて、gRNAのテンプレートとなる55-merのカスタムオリゴDNAを合成します。gRNAのデザインはNEBのウェブサイトで簡単にできるようになっています。今回はプラスミドを別々の場所で切断する2つのgRNA用オリゴを作りました。

キット化されていて、やることはそう複雑ではありません。(1) gRNA作成キットにテンプレートDNAを混ぜてインキュベートしgRNAを作成、(2) 1のgRNAをCas9と混ぜてしばらくおいて、切断したいプラスミドと混ぜてインキュベート。実際に必要なのはこれだけです。

RNAを扱うのでRNase対策が必要です(気をつかうので嫌いな実験です)。ちゃんとやるなら1の後に、gRNAがちゃんと合成できているか電気泳動して確認、gRNAの精製、gRNAの定量、テンプレートDNAのDNaseによる消化、DNaseの不活化、が必要。2の後にプロテアーゼによるCas9の消化が必要です。これらに必要な試薬はキットには入っていません。今回は手抜きしてこれらをすべてすっ飛ばしました。gRNAはキットに書かれているおおよその作成量を参考にしました。

お待ちかねの結果です。アガロースゲルで電気泳動してチェックしました。左から、Cas9に2つのgRNA(2144, 2145)を混ぜたもの、2144だけ、2145だけを混ぜたもの。

Cas9によるプラスミド切断1

この写真、分子量マーカー等がなくて恐縮ですが、下の方にモワッと見えるのは分子量が小さいのでテンプレートDNAだと思われます。で、肝心のプラスミドですが、なんかはっきりしない。ちゃんとプラスミドはあるはずなのに薄い。分子量が大きいところでスメアーになっているようにも見える。

Cas9やgRNA作成キットに入っている酵素がプラスミドにくっついてうまく泳動できていないのかもしれない。そこで、熱処理(65℃10分)をしてそれらの酵素を失活させてみることにしました。

Cas9によるプラスミド切断2

おお、ちゃんと見えた!切れてる! 2カ所切断の結果からみて、両方の部位でちゃんと切れているようです。「狙った部位でDNAを切る」というのがこんなに簡単にできるようになったんですね。スゴい!

これが使える系としてルーチンになるかどうかは、プロトコルの最適化をもうすこしやって、どれくらいの手間でどれくらいのコストで実行可能か、どれくらい安定かを調べてみる必要があります。PCRに勝てるかどうかが1つの指標ですね。

最後に、Cas9の情報を下さったNYさん、実験を手伝ってくれたHakuさんに感謝します。


いくつか補足です。

  • この実験で一番コストがかかるのはgRNA合成で、単純計算では一回3,600円。ただ、gRNAは一度合成すると100回分くらいは使える。今回は濃度計算を誤って100倍位入れてしまった。
  • 切断したプラスミド溶液にはRNaseAが入っている。それでもプラスミド切断ができた。Cas9-gRNAが一旦できるとgRNAはRNaseAによる消化から守られるのかもしれない。gRNAを間違って大量に入れたから大丈夫だったのかもしれない。
  • 酵素量をどれだけ減らせるか、どれくらいの量のプラスミドを何分で消化するかが検討課題。
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