2014-03-242014-03-25 CellDesigner4.3でCell Cycleモデルを再構築してみよう(2) 前回「CellDesigner4.3でCell Cycleモデルを再構築してみよう(1)」の続きです。 それでは早速始めてみましょう。まず初めにすることはモデルのダイアグラム(線図)を作ることです。CellDesignerで描くダイアグラムは、「Process Diagram」と呼ばれています。 モデルのダイアグラムを作る(1/4):要素を作成 CellDesigner4.3をダウンロードしてインストール、これは出来たものとします。ツールバーの”New”から新しくモデル(キャンバス)を作ります。大きさはあとで変えられますが、2000×2000のように大きめに作っておいたほうがいいです。 Chen2004の論文のTable 1のリストにある要素(タンパク質、複合体、構造物など)を、ツールバーから選んで作成しつつキャンバス上にのせていきます。途中、リン酸化状態や、C2やF2、RENTなどといった複合体の略号が出てきます。これが何なのかFigure 1の図と文脈から理解しつつのせていきます。 全部のせると以下の様になりました。 Chen2004モデル再構築―途中経過1:タンパク質、複合体、構造物など役者をすべて書き上げた。 モデルのダイアグラムを作る(2/4):微分方程式の読み取り方 次にこれらの要素どうしをつないでいきます。この時、微分方程式を読み解く必要があります。Table 1の常微分方程式の基本的な作りはすべて同じです。 「左辺の要素の時間あたりの量の変動は、右辺の要素の量によってきまる」、「右辺の作りは、左辺の要素を作る反応と失う反応から出来ている」というものです。 Cln2を例に見てみます。 常微分方程式で記述されたCln2の変動。 上記の微分方程式を解釈してCellDesigner4.3で描くと以下の様になります。 Cln2の合成・分解についてCellDesigner4.3で描いたもの。 Chen2004モデルでは、Cln2などのそれぞれのタンパク質は、「どこからともなく合成され、分解されてどこへともなく消える」ように記述されています。これを分子生物学的に意訳すると、「DNAから転写・翻訳をへてアミノ酸から合成され、分解されてアミノ酸に戻る」ということになります。それをプロセスダイアグラムで描いたのが上図です。 Chen2004モデルでは、アミノ酸は細胞内に豊富にあって細胞周期制御システムに影響を与えない「境界条件」という扱いになっています。また、転写・翻訳は細胞周期全体の進行よりもずっと早い過程なので、このモデルでは省略できるとしています。 ただしこの前提は、必ずしも正しいとは言い切れません。時にはアミノ酸の量や、転写・翻訳の速度が細胞周期に影響することもあるでしょう。ですが、モデルが必要以上に複雑にならないように、このモデルではそれらの過程は省略されているわけです。これはモデルを作る時に重要な事で、何が知りたいかに応じて「どんな現象を含めたモデルをどれくらいの詳細度で組み込むか」を決めていかなければならないのです。 モデルのダイアグラムを作る(3/4):要素をつなぐ さて、それではTable 1の微分方程式の情報から分子間をつないでネットワークを描いていきたいと思います。60行ほどある式のうちの6行を入力した状態です。 Chen2004モデル再構築―途中経過2:まだ1/10程度。だいぶ毛玉化し始めた。 もうすでに毛玉の様になってきて何がどうつながっているのかわからなくなってき始めました。この辺りから完成図を考えたレイアウトが必要になってきます。もう少し頑張ってとりあえず最後まで入れてみます。 Chen2004モデル再構築―途中経過3:数式をすべてダイアグラムに起こしました。 さっきのダイアグラムとちょっと見栄えが違うと思います。これは、つながりを綺麗にするコツの1つなのですが、要素同士をつなぐ線を右クリックで「Orthogonal」に変換します(もともとはPolyline)。そうすると電気回路図のようになり、ごちゃごちゃ感が少し減ったと思います。さてここからこの図をもう少し綺麗にレイアウトしていきます。数式を入れるのはその後です。 モデルのダイアグラムを作る(4/4):レイアウトとカラーリングをする 途中でスクリーンショットをとったつもりでしたが保存されていませんでした。というわけでいきなり(ほぼ)完成型をお見せすることになります(すみません)。 Chen2004のモデル再構築途中経過ーダイアグラムはほぼ完成 もちろんこのダイアグラムは作る人によってまったく違うものになるはずです。 このダイアグラムをスムーズに見た目綺麗に作るためのチップスとして: 1)あまりに線がごちゃごちゃする場合には、同じ要素を複数回マップ上に登場させます。その場合、どこに同じ分子があるのかわかりやすいように色をつけてくと良いです。CellDesigner4.3では、同じidを持つ要素を何度マップ上に登場せさても、モデルとしては同じ分子と認識されます。 2)同じように、「モジュール」を作る方法もあります。例えば、Sic1やCdc6は、リン酸化・脱リン酸化の制御を受けますし、Clb5、Clb2とそれぞれ複合体をつくります。これを全部一度に描こうとすると何がなんだかわからなくなります。一旦、リン酸化・脱リン酸化のモジュールと、Clb5都の結合、Clb2との結合、それぞれにばらして描き、可能ならば後で結合します。今回の場合には、そのような手順でモデルの下半分のごちゃごちゃした部分を作りました。 3)線(エッジ)に、リン酸化、脱リン酸化、転写活性化、分解促進などに分けて色を付けます。これでエッジが重なってしまっても区別がつきます。 4)長いエッジを使うかどうかは、判断が難しです。無理に長いエッジで遠くに離れたものをつなぐよりは、1のように要素を複数回登場させる方が良いかもしれません。どちらが「つながりがわかりやすいか」ということになります。見た目の美しさで判断するというのも(本質的ではありませんが)、「あり」でしょう。 5)「Complex」を「compactモード」で描画します。このダイアグラムでは灰色に見える要素です。「normalモード」にすると複合体の中身が見えます。Chen2004モデルでは、複数の要素(例えばCln2、Cln3、Clb2、Clb5といったサイクリン依存性キナーゼ)をまとめて扱うことがあり、これをいちいちすべてバラバラに書くとわかりにくくなるのでこのように描きました(本来のcomplexと意味合いとは異なります)。 というわけで、この後、いよいよ数式を入れていくことになります。 「CellDesigner4.3でCell Cycleモデルを再構築してみよう(3)」に続く。 Share on FacebookTweet(Visited 731 times, 3 visits this week) システムバイオロジー ソフトウェア テクノロジー モデリング 細胞周期 論文 酵母
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