スピンドルチェックポイントのロバストネスを決める要因

Determinants of robustness in spindle assembly checkpoint signalling.

Heinrich S, Geissen EM, Kamenz J, Trautmann S, Widmer C, Drewe P, Knop M, Radde N, Hasenauer J, Hauf S. Nat Cell Biol. 2013 Nov;15(11):1328-39. doi: 10.1038/ncb2864. Epub 2013 Oct 27. PMID: 24161933

細胞周期のM期中期に、スピンドル(紡錘糸)が染色体のキネトコア(動原体)にきちんと結合したかどうかを監視する「スピンドルチェックポイント」が働きます。このチェックポイントがうまく働かないと、スピンドルに異常があっても染色体の分離が進んでしまい、結果として染色体が娘細胞にうまく分配されなくなってしまいます。

この論文では、スピンドルチェックポイント機構の「ロバストネス」を調べました。

どうやって?

このチェックポイント機構で働くタンパク質の量をどれだけ過剰・減少したらチェックポイント機構がうまく破たんするかを調べたのです。いわゆる「因子の量の変動に対するロバストネス」を調べたことになります。

で、この論文の偉いところ(?)は、細胞内の因子の量を正確に測定し、その量を厳密に増減させ、その時に起きる異常(表現型)を定量した、という努力にあります。サプリメンタリーをみたら「おつかれさん」と言いたくなるデータの山です。

この研究でわかった重要なことは主に以下の3点です。

(1)Mad2タンパク質の量を通常からわずか20%減らしただけで、スピンドルチェックポイントの制御が破綻し始める。これは、驚くべき「脆弱さ」と言っていいと思います。

(2)通常の細胞では、この脆弱さが露呈しないように、通常の細胞ではMad2タンパク質の発現量は非常に厳密に決まっている(細胞間のばらつきが少ない)。

(3)この脆弱さが生まれるのは、Mad2とその制御対象のSlp1の間に量のバランス(ストイキオメトリーバランス)があるからである。

20%の減少で制御が破たんするというのは、確かに脆弱だなと思いました。一方で、通常の細胞では量の増減が起きないように発現量を厳密に決めている制御というのは、逆に大変「ロバスト」だとも言えます。量のバランスが乱れると容易に破たんするシステムでは、量のバランスを乱さないように作られている、それによってシステム全体をロバストに保っている、ということでしょうか。

 

ところで、この論文のコンセプトは、このブログの筆者のグループでやってきた「ロバストネス解析」の考え方とほぼ同じです。また、「量のバランスの乱れが細胞内の制御に脆弱性を生む」と言うのは、いくつかの論文で私たちが以前から主張していることです。にも関わらず、この論文で私たちの論文が引用されていません。もっと頑張って自分たちの発見を主張しないといけないなと思いました。

 

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