CellDesigner4.3でCell Cycleモデルを再構築してみよう(1)

出芽酵母の細胞周期の数理モデル

細胞周期の数理モデルとして有名なのは、John Tysonのグループが2004年に発表した、”Chen2004モデル”です。発表されたのはもう10年も前ですが、出芽酵母の細胞周期制御について、当時までに蓄積されていた分子生物学の知識をもとに30程度の遺伝子―タンパク質の機能とつながりを組み込んで作られたモデルです。このモデルは、それまでに調べられていた130の変異株の表現型のうち121を再現します。個人的には、これは「歴史に残る仕事」だと思っています。

私は当時このモデルを見て、これからこのモデルがどんどん発展して、酵母の細胞周期のあらゆることが数理モデルのシミュレーションから理解できるようになるだろうと期待しました。ところが実際にはこのモデルはそれからほとんど発展していません(私たちの2010年の論文はその発展に若干寄与しました)。ここまで複雑な数理モデルは作った本人以外がそう簡単に理解し改変できるものではないのです。

Chenのモデル自体はいくつかの方法で利用することが出来ます。例えば、WEB上でのシミュレーション。モデルのためのウェブサイトがあり、そこにオンラインシミュレーターがあります(2014年3月現在エラーが出ているようです)。あるいは、公共のモデルデポジトリに登録されているモデルを、CellDesigner4.3のようなシミュレーションソフトで動かすことも出来ます(これについては後述します)。

ところが、そこにあるモデルを動かしてみただけでは、そのモデルにどんな分子が含まれていて、それがどのように相互作用しているのか、またそれがどのように数式化されているかを理解することは容易ではありません。論文をじっくりと読んで頭のなかで再構築することも不可能ではありませんが、大変むずかしい。生物学実験だってそうですが、自分の手でやってみて初めて(だんだんと)理解できるようになります。

CellDesigner4.3でChen2004を動かしてみる。

CellDesigner4.3は、細胞内の分子の相互作用ネットワークをSystems Biolog Graphical Notation (SBGN)という方法によって描画することを支援するソフトウェアです。さらにこのソフトウェアでは、その相互作用のネットワークに適当な数式・パラメーターを入れていくことで、数理モデルにしシミュレーションをすることも可能になっています。

このソフトを使ってモデルを作ることの利点は、「モデルの構造を視覚的に図として理解しながらシミュレーションができる」点です。多くの数理モデルは、さまざまなソフトウェアで互換性のあるSystems Biology Markup Language (SBML)で記述されていて、CellDesiger4.3でもこれは利用可能なのですが、このファイルから視覚的なモデル構造の図を得ることは出来ません。自分たちで図にしなければならないのです。

例えば、Chen2004モデルのSBMLファイルを上記のデータベースからダウンロードして、CellDesigner4.3で開いてみます。

BIOMD0000000056

CellDesigner4.3で開いたChen2004のモデル図(BIOMD0000000056より)

何がどうなっているのかさっぱりわかりません。この毛玉を紐解いても生物学的な情報をここから得ることはほとんど不可能です。

ちなみにこのモデルをCellDesigner4.3でシミュレーションすると下のような結果が出ます。Cell massとCln2、Clb2の活性が周期的に変動している様子がわかります(実際にはこのようなグラフが変数の数だけ出てきますが、一部を示しています)。

スクリーンショット 2014-03-18 20.02.37

Chen2004モデルのシミュレーション結果

なお、機会があれば詳細を分析したいと思いますが、このモデルファイルはCellDesigner4.3のフォーマットと一部齟齬があるために、書き換えて保存するとシミュレーションがううまく動かなくなります。

CellDesigner4.3でChen2004モデルを再構築してみる。

ずいぶんと前置きが長くなりました。このモデル、私たちは主にMATLABを使ってシミューレーションをしていましたが、今回モデルを視覚化した方がいいと思われる機会がありましたので、それを利用してCellDesigner4.3を用いてこのモデルを再構築してみたいと思います。

実は以前も挑戦したことがあったのですが、当時のCellDesignerのバージョンのSolverでは、このモデルに含まれるEventsに対応していなかったのでシミュレーションにまで至りませんでした。現在のCOPASI solverではこれが出来ます(現に上のモデルは動いています)。

SBGNの描画方式に従い、図を見たら相互作用のネットワークが理解でき、シミューレーションもできて、それでいて美しい(?)。その過程をこのブログで連載してみようと思います。いうなれば「写経」ですね。

今回は今の私のスキルでどれくらいの時間でどの程度の物ができるのか、それにチャレンジしてみたいと思います。

CellDesigner4.3でCell Cycleモデルを再構築してみよう(2)」に続く。

 

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2 Comments

  1. Pingback: 「システムバイオロジー」という研究志向 | 酵母とシステムバイオロジー

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