多数のサイズの違うサンプルを電気泳動した時に、そのサイズがちゃんとあっているかを皆さんはどうやって評価しているでしょうか?
下の泳動像は私たちの実際のサンプルです。コロニーPCRでインサートのDNA断片を増幅し、アガロースゲル電気泳動で分離しています。それぞれのレーン2つごとに、期待されるバンドサイズが違います。
分子量マーカーと隣のバンドの位置関係から、だいたい思ったとおりのサイズのDNA断片が得られているかを予測することは可能です。しかし、これが100サンプル、数100サンプルとなってくると、人間の目で行うことはとても出来ません。
このエントリーでは、私たちが以前、酵母の6000ほどの遺伝子を相手に実験した時に作った簡単なバンドサイズのチェック法を紹介します。おそらく研究者の皆さん全員が使っているエクセル(MS Excel)のグラフ機能を使います。
下に示したのが実際のサイズチェックの図です。
数字が割り振られているのがサンプルのレーンで、Cはインサートが入っていないコントロールです。各サンプルの期待されるサイズは赤色で示されていて、インサートがうまく入らなかった場合のコントロールのサイズは青色で示されています。期待されるサイズのDNA断片が得られているか、かなりはっきりとわかると思います。
以下にやり方を説明します。
まず、
- レーン、期待されるバンドサイズ、コントロールのサイズ(もしあるなら)をリストする。
- その横に、ゲルのイメージを貼り付ける。
次に、
- データをもとに「マーカー付き折れ線」グラフを作る。
ここからこのグラフにいくつかの「加工」を施していきます。
- 縦軸を対数表示にする。
- 縦軸の最小値と最大値を設定する(泳動しているDNAのサイズによって)。ー 今回は最小値を1000に設定。
- グラフの背景を「塗りつぶしなし」にする。
以下は途中経過です。
さらに加工していきます。
- 各グラフをつなげている線を消す(グラフを選び「線なし」にする)。
- 「マーカースタイル」で横棒を選び、サイズを大きくする。ー 今回は25にした。
以下は途中経過です。
次に、
- ゲルに重ね、縦・横のサイズを調整する。
これでほぼ完成です。
あとは、使い勝手と見た目が良いように加工します(必須ではありません)。
- グラフの影を消す(初期設定で影が付いているExcel2011はクソ*)。
- 縦軸を消す。
- マーカーの塗りつぶしカラーを変える(初期設定がグラジエントになっているExcel2011はクソ*)。
- マーカーの透明度を上げる。
- フォントをArialに変える(初期設定がCalibriなExcel2011はクソ*)。
*あくまで個人の感想です。
これで完成です。はじめに見せた図とは色のアサインメントが逆になっています。見やすい色に変えたら良いと思います。
同じような解析が多数ある場合には、このワークシートを「ひな形」として保存しておけば、あとはサイズを変更するだけで他のゲルにも使えます。
また、線グラフを複数描くことで、制限酵素で処理したDNA断片のように複数バンドがある場合にも対応できます。
面白いですね。ウェル位置とコントロール位置を合わせればサイズが合うのでしょうか?まぁ確かにエクセルのグラフの配色といい、雛形といい、センス悪いものが多いですね。
私はイメージを1レーンずつ切り出して”expected length”の長いものから順に自動で並べるプログラムを作っています。全ての反応がうまくいけば斜めにだーっとバンドイメージが出てきて、ハズレは飛び出して見えるという感じです。