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2015-09-16

Selective ploidy ablation: プラスミドをハイスループットに移す方法

Selective ploidy ablation, a high-throughput plasmid transfer protocol, identifies new genes affecting topoisomerase I-induced DNA damage. Reid RJ, González-Barrera S, Sunjevaric I, Alvaro D, Ciccone S, Wagner M, Rothstein R. Genome Res. 2011 Mar;21(3):477-86. doi: 10.1101/gr.109033.110. Epub 2010 Dec 20. PMID:21173034

それほど新しい論文ではないのですが、たまたま見つけて(私たちにとって)とても使えそうな実験手法であったので、覚書を兼ねて書いておきます。

簡単に言うと、「出芽酵母の株間でプラスミドをハイスループットに移動させる方法」ということになります。

酵母で実験をしていると、様々な変異株にプラスミドを導入して何が起きるかを調べることがよくあります・・・と言うか私たちの研究室であれば、その手の実験がほとんどすべてと言っても良いくらいです。

その場合、通常、大腸菌から精製したプラスミドを1つ1つ形質転換操作によって酵母細胞に導入する事になります。これを効率よく行うための試薬も発売されています。

この論文で紹介されている方法は、「染色体を改変した酵母」と「接合」という酵母ならではの技術を用いてプラスミドを移します。

接合でプラスミドを移す場合には、プラスミドを持ったドナー(供与)株と、プラスミドを導入したいレシピエント(受容)株 ー 通常は何らかの変異株 ー  を接合させ、二倍体し、その後何らかの方法でレシピエント株の遺伝型を持つ一倍体にもどすという手続きが取られると考えられます。

この戻す操作は、普通に考えると胞子形成 → 一倍体株の選別、ということになるのですが、これが結構面倒臭い。だったら1つずつプラスミドを導入したほうが早い。

そこでこの論文ではとんでもなくスペシャルな技が使われています。

各染色体には、セントロメアという部分があり、これは染色体の分配に関わる重要な機能を果たしています。セントロメアが壊れると染色体はうまく分配されなくなるので、染色体の保持がうまくいかなくなります。

出芽酵母のセントロメアはとても小さく、重要な部分は100bp程度しかありません。さらにこの近傍に非常に強力なプロモーターを配置してmRNAの転写を誘導すると、セントロメアに結合するタンパク質が結合できなくなり、セントロメアの機能がなくなります。したがって、そのプロモーターが何らかの条件でのみONになるようすれば、条件依存的にセントロメアの機能を失わせ、目的の染色体を失わせることができるわけです(これを Conditional CEN と呼びます)。

 今回の場合、ドナー株の染色体16本すべてに Conditional CEN を組み込んでおき、レシピエントと接合させ二倍体化させたあと、条件を変えて Conditional CEN の機能を失わせ、ドナー株の染色体をすべて取り除いてしまい一倍体に戻すのです。

いや〜、これも酵母ならではの、とんでもないスゴ技ですね。

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