Skip to content
酵母とシステムバイオロジー
酵母とシステムバイオロジー

A Blog for Yeast and Systems Biology

  • このサイトについて
  • 新着記事
  • サイトマップ
酵母とシステムバイオロジー

A Blog for Yeast and Systems Biology

2010-04-232011-04-28

酵母の細胞周期制御に見られる量的不均衡が生み出す脆弱性

Fragilities caused by dosage imbalance in regulation of the budding yeast cell cycle.
Kaizu K, Moriya H, Kitano H.
PLoS Genet. 2010 Apr 22;6(4):e1000919.
PMID: 20421994

手前味噌ですが、私たちの研究室から発表された論文です。内容を紹介します。

細胞システムは一般的に遺伝子発現の変動に対してロバストであると考えられています。しかし、例えば酵母の細胞周期制御においては、CDC14フォスファターゼの発現が2倍程度上昇しただけで細胞は死んでしまいます(細胞はCDC14の発現変動に対して脆弱です)。本論文ではこの原因が、CDC14フォスファターゼ阻害遺伝子NET1との量的な不均衡から生じていることを、コンピュータモデルによるシミュレーションと生物学実験により証明しました。

一方、シミュレーションにより同様な脆弱性が予想されたセパレースESP1は、実際の細胞では100倍以上に発現を上昇させても細胞は死にません。私たちは、この原因が未知のESP1の制御によるものと考えさらに実験を行ないました。その結果、量的不均衡を回避するために阻害因子PDS1の量をダイナミックに変化させるメカニズムが存在していることが明らかになりました。

この研究では、一般的にロバストであると考えられている細胞システム内に「量的不均衡」という脆弱点が存在していることを示しました。CDC14の制御はこの脆弱点がむき出しになっているケースで、ESP1の制御はこの脆弱点が他の制御によって補完されているケースです。

多くの他のケースでは、ESP1のように脆弱性がむき出しにならないように細胞内ネットワークは進化するはずです。私たちは、CDC14の制御のようにむき出しになっているケースは、別の重要な機能の「トレードオフ」として理解できると考えています(これは今後の論文で発表予定です)。

最後に、私たちはこの研究を通じて発見したESP1の制御をコンピュータモデルに組み込むことで、実際の細胞により近いモデルへと改良することに成功しました。今後は、このような解析を繰り返すことで、究極のコンピュータ細胞の構築へと展開したいと考えています。

facebookShare on Facebook
TwitterTweet
(Visited 251 times, 1 visits this week)
システムバイオロジー 論文 酵母

投稿ナビゲーション

Previous post
Next post

Related Posts

酵母で機能し、設計に応じて表現型の多様性を生み出す合成染色体腕

2012-01-26

Synthetic chrom…

Read More

BYシリーズ酵母株のためのゴールドスタンダード完全培地

2015-04-152022-12-13

実験室での微生物の培養には、そ…

Read More

【海外サイエンス・実況中継】注目される研究分野・研究者と求められる人材 ~ システムバイオロジー ~

2010-05-172011-04-28

「カガクシャ・ネットワーク」と…

Read More

コメントを残す コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

3 × 2 =

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください。

人気の記事

  • 出芽酵母と分裂酵母の基本知識 (92)
  • 論文の図とレジェンドに見る悪しき伝統 (96)
  • 大腸菌の形質転換ではヒートショックも後培養もいらない(こともある) (34)
  • ナノポアシーケンサーMinIONインプレッション (33)
  • シリーズ過剰発現・第5回「過剰発現に用いられるプロモーター」 (20)
  • 微生物実験でのイエローチップの(驚くべき)使い方 (17)
  • 岐路に立つ酵母の栄養要求性マーカー (18)
  • シリーズ過剰発現・第1回「過剰発現とは?」 (14)
  • きっとうまく行くプレゼンスライドの作り方 (13)
  • 制限酵素のイタリック表記は必要ない (13)
©2025 酵母とシステムバイオロジー | WordPress Theme by SuperbThemes