酵母で機能し、設計に応じて表現型の多様性を生み出す合成染色体腕

Synthetic chromosome arms function in yeast and generate phenotypic diversity by design.

Dymond JS, Richardson SM, Coombes CE, Babatz T, Muller H, Annaluru N, Blake WJ, Schwerzmann JW, Dai J, Lindstrom DL, Boeke AC, Gottschling DE, Chandrasegaran S, Bader JS, Boeke JD.Nature. 2011 Sep 14;477(7365):471-6. doi: 10.1038/nature10403. PMID: 21918511

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Craig Venderが、完全な合成ゲノムによるマイコプラズマを作ったのは、一昨年の出来事でした。

この論文は、パン酵母 S. cereviaieの染色体を人間が全部作りなおそうと言うプロジェクトのはなしです。その試作として2つの染色体の腕の片方を人工合成したものと置き換えました。

ただ置き換えるのではなくて、置き換える時に、1)染色体上にたくさんあるが必須でない(あるいは不要な)要素、tRNAやトランスポゾンを取り除き、2)TAGというストップコドンをTAAにかえる事で、そのコドンを後で好きなアミノ酸を入れられるようにし、3)LoxPSymという組み替えを誘発できる配列を所々に組み込みました。

そして、あくまでも酵母の増殖自体はもとの野生型と変わらないようにしています。

こうする事で、人間がいじるときに邪魔になりそうなものを染色体から取り除き、また、3の配列をつかって、染色体構造を一気に変換させて酵母を「進化」させることができるようになります。

酵母の機能をいじりやすくするために、「最小ゲノム」を作ろうというプロジェクトがありますが、染色体を少しずつ削っていくと、組み合わせによってはそれ以上削れなくなってしまうことが頻繁に起きます。

組換えを誘発する領域を染色体にバラバラに組み込んでおけば、ランダムにいろいろな組み合わせの染色体構造もった酵母が一気にでき、そこから生き残るやつを選択すれば良い、という寸法です。その中には、本来の酵母では難しかった物質生産が出来るようになった酵母も出てくる可能性があります。

ところで、この酵母を作るのは大変な手間とお金がかかります。今回の仕事は、学部生に「ゲノムを作ろう」という講義の一貫として4年間かけてつくったのだそうです。そして、論文に記載されているのは、酵母のゲノムの1%が合成できているという状態です(現在は10%以上になっているという話です)。

昨年学会で聞いた時の話では、「とにかく手間とお金がかかるので酵母研究者皆でやりませんか?」というBoeke氏の主張でした。

ちなみに、このプロジェクトには、Sc2.0という名前が付けられています。Web2.0という言葉があり、そこからとったのだと思いますが、ちょっと古くさくなりつつある気がしないでもありません。それこそ全合成酵母が完成した時には、「2.0、なにそれ?」と言われてしまうのではないでしょうか。

 

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