ゲノム重複とACE2の変異により、出芽酵母は多細胞化し早く沈殿するように進化する。

Genome duplication and mutations in ACE2 cause multicellular, fast-sedimenting phenotypes in evolved Saccharomyces cerevisiae.

Oud B, Guadalupe-Medina V, Nijkamp JF, de Ridder D, Pronk JT, van Maris AJ, Daran JM. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Oct 21. PMID: 24145419

以前、「酵母を進化させて多細胞化することに成功した」という論文が話題になったことがありました(蝉コロンさんのブログでも紹介されています)。この多細胞化酵母は、細胞集団が雪の結晶のように見えるので、”Snowflake yeast”と呼ばれたりもしています。

これ、酵母の専門家から見れば、「多細胞化ではなくて単に酵母の細胞どうしがくっついているだけじゃねえか?」というツッコミもあるのですが、くっつき始めることから多細胞化の進化が始まるのであれば、その第一歩だと考えてもいいのかもしれません。

今回の論文は、その原因となっている変異がわかりましたという話です。

著者らは、上記のSnowflake論文を出した進化の専門家のグループではなく、細胞工学の専門家のようです。

酵母の細胞工学では、よくジャーファーメンターで酵母を連続的に培養します。その時、一定時間培養しては上清をすて、また培地を足して一定時間培養して上清をすて、ということを繰り返すと自然と多細胞化して早く沈殿するように進化した酵母が選択されることになります。

この論文の筆者らは、以前から酵母がそういうふうに進化することを経験的に知っていたようです。で、「これは多分上記のSnowflakeと同じものだろう。だったらどこに変異が入っているか調べてみよう。」と思ったのでしょう(本当は、Snowflakeグループがやっておくべき仕事だと思いますが)。

その結果、Ace2という転写因子が機能欠損になることと、全ゲノム重複が起きること、この2つでSnowflakeになるということが分かりました。

Ace2は細胞周期の最後に細胞を分けるときに働き、CTS1という遺伝子の転写を誘導します。Cts1はキチンの分解酵素です。酵母の母細胞と娘細胞はキチンで結び付けられているので、この酵素が働かないと母細胞と娘細胞が離れず、細胞どうしがくっついた状態になります。

実際、Snowflakeにキチン分解酵素を作用すると、細胞はばらばらになりました(やっぱり単にくっついているだけなんです)。

この実験でもちいたのは、一倍体の酵母でした。全ゲノム重複が起きると、二倍体とほぼ同じゲノム組成になります。一倍体では、娘細胞が出芽する場所は、その前に出芽した娘細胞の近傍になります(axial budding)。一方、二倍体では、娘細胞が出芽する場所は、その前に出芽した娘細胞とは反対側になります(polar budding)。多分このパターンの違いがSnowflake化に必要なのでしょう。

進化したSnowflakeに見つかったのは上記2つの変異でした。

著者らは最後に「リバースエンジニアリング」により、二倍体の酵母にACE2の変異を導入することで、Snowflakeが作れることを再現しました。

なお、Snowflake化した酵母は、細胞が回収しやすいとか栄養の利用が向上している(かもしれない)などの工学的意義もあるかもしれないということです。

 

(Visited 204 times, 1 visits this week)

2 Comments

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください