マイクロチップ電気泳動装置は、アガロースゲル電気泳動に置きかわれるか?

先日、当研究室にマイクロチップ電気泳動装置(島津 MultiNA)が導入されました。使ってみてのファーストインプレッションを書いてみたいと思います。特に、従来のアガロースゲル電気泳動(AGE)との比較してどうかという点を考えます。

当研究室では、多数の遺伝子をPCRによって増幅してそのサイズを確認するという実験を頻繁に行ってきました。これは、AGEの泳動写真をエクセルで作ったサイズ評価のグラフと重ねあわせることで評価してきました。これで不便があったわけではないのですが、ゲルへのアプライ操作を自動にしたり、バンドサイズをデジタルに出せれば研究が加速するのにと思ってきました。

マイクロチップを使って自動で核酸を電気泳動する島津のMultiNAは、数年前に発売された当時から気になっていました。ただ、発売当初は数kbのDNAが解析できず、私たちの用途には使えないと考えていました。最近これらのサイズのDNAが扱えるような試薬が販売された、ある研究者がTwitterでこの装置をべた褒めしていた、購入する予算をたまたま頂いた、などの理由でMultiNAを購入し使ってみることにしました。

導入当初、研究室のメンバーにAGEは一切やめてMultiNAを使うように言ったのですが、全然移行してくれません。新しい機器というものは、導入当初はそれを使うシステムがうまく出来ていないので使うのが億劫になるものです。ということで、私が実際に使ってみて、長年やってきたAGEを置き換えるのかどうかを考えてみました。

今現在は、上記のような大量な遺伝子解析は行ってはいません。プラスミド構築を行なう際のPCR産物のサイズのチェックや、制限酵素消化によって生じる断片のサイズのチェックなどが、当研究室では日常的に行われている作業です。この際のサイズのチェックをMultiNAで行ってみました。

ちなみにMultiNAの「売り」と考えられるところは;
・サンプルをチューブのままセットするだけで自動で泳動を行ってくれる。
・泳動結果(バンドサイズ)がデジタルデータとして得られる。
・サンプルあたりのランニングコストはアガロースゲルよりも安い。

といったことがあげられるのでしょう。これらのメリットが、日常のプラスミド構築におけるAGEを上回るのでしょうか?両者で12サンプルのPCR産物を解析してみました。

 

結論から言うと「AGEのほうが便利」でした。

・解析までの準備:これは、操作は違うものの手間はほぼ同じでした。泳動用のDyeを混ぜたりゲルにアプライするピペッティング操作が必要ないのは若干便利ではあります。

・解析にかかる時間:12サンプルで30分くらいでした。1サンプルずつ解析するので最後のサンプルの結果は解析が終了するまで見れません。AGEでは全部が一度に泳動されますので、泳動開始5分位からすべての結果を見ようと思えば見れます。ちゃんとサイズをチェックする場合には15~20分くらいでしょうか。

・解析の正確さ:サイズが5kbを超えるようなDNAのサイズが、本来よりも小さいサイズと解析されていました。これはサイズマーカー(DNAラダー)との泳動量の違いに起因しているのかもしれません。

・データ解析:AGEの場合には目でみて結果を解釈します。MultNAでも同じようなバンドパターン図を出してくれます。MultiNAではこれに加えてデジタルデータ(バンドサイズや量のデータ)も出してくれます。ただ、後者の解析は今回の用途ではほとんど使えませんでした。バンドサイズが正確に解析されていなかったこと、目で見た場合にはノイズと判断するようなバンドもピークとして検出してしまったせいです。

ということで、MultiNAが日常のプラスミド構築においてAGEにとって代わるとは言いがたいです。

ただしこれらは、あくまで日常のプラスミド構築でMultiNAを使ってみた感想です。大量サンプル・サイズの小さなDNAの解析では、MultiNAの実力が発揮されてくるのでしょう。ただしその際には、デジタルデータとして得られる泳動結果を、用途に合わせてよりシステマティックに解析するためのソフトウェアが必要です。

これから他の用途でもいろいろ使ってみて、その都度レポートしていきたいと思います。

 

 

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