酵母の熱ショックでの生存に必要な遺伝子は、代謝や信号伝達に関わっていて、熱ショックで誘導される遺伝子とはほとんど一致しない。

Yeast metabolic and signaling genes are required for heat-shock survival and have little overlap with the heat-induced genes.

Gibney PA, Lu C, Caudy AA, Hess DC, Botstein D. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Oct 28. PMID: 24167267

酵母界の大御所、David Botstein氏のグループからの論文です。

酵母で熱ショックの耐性に関わる遺伝子を遺伝子破壊株コレクションから取得した、という仕事です。酵母の研究をよく知人は、「え?いまさら〜?」と思ったのではないでしょうか(というか私は思いました)。なんかそういう仕事、何度も報告されてきたような気がします(実際、イントロでもそう書いています)。

ただ、もちろんこの仕事の新しさはあります。プロトトロフ(栄養要求性のない株)で破壊株コレクションを作りなおして、ファーメンターを使ったケモスタットによって増殖速度をゆっくりにそろえて、バーコードを使って次世代シーケンサーで定量的な解析を行っていたり。

でも「熱ショック耐性?まだ調べるの?」という疑念はぬぐえません。

この研究での発見の主要なものは、(1)熱ショックで発現が上昇する遺伝子と熱ショックでの生存に大切な遺伝子は、ほとんどオーバーラップしていない、(2)50数個の遺伝子の破壊株のみが熱ショックに対して有意に増殖低下を起こす、(3)熱ショックでの生存に必要な遺伝子は、代謝や信号伝達に関わっている物が多かった、(4)これらがどうやって熱ショック耐性に関わっているかはよくわからない、(5)機能未知の遺伝子も多かった、などです。

これが一昔前のゲノムワイド解析ならば、なんて新しい発見なんだろうと思うかもしれませんが、2013年の現在「これが発見ってどうなのよ。」と、思ったりもするわけです。

ですが、Significance(とアブストラクト)に書かれた一文をみて、私は関心せざるを得ませんでした。

“…, suggesting that our understanding of the systems-level response to heat stress is incomplete.”

「(この事実は)、熱ストレスに対するシステムレベルの応答に対する私たちの理解が、不完全であることを示唆している。」

うひょ〜、かっけぇ!!

「酵母の熱ショック」という、多くの研究者があの手この手で調べてきて「最もよく分かっている」と思われている生命現象ですら、システムレベルで見たらまだまだ説明できないんだと、2013年の今だから言い切れたわけです。

酵母の(あるいはあらゆる生命科学の)研究が進む方向性をBotsteins氏なりに明確に示した、非常にメッセージ性の強い論文だと思いました。私もこんなことが言ってみたいものです。

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