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2017-08-172017-08-20

タンパク質を発現量で分けて眺めるだけでも面白い

「Proteomap : プロテオームを可視化する新しい手法」で書きましたプロテオマップですが、やっぱりコレはすごいです。色々なタンパク質の機能がそれなりにちゃんと分かっていて、それぞれがどれくらいの量発現しているかがちゃんと測れるようになった現代だからできた「生命の新しい視覚化法」と言って良いものでしょう(アートとしても美しいと私は思います)。ずっと眺めているだけでも、細胞についてなんかいろんなことが分かってくる気がします。

今回はプロテオマップで少し遊んでみました。

これは、酵母のゲノムをプロテオマップで視覚化したもの。

プロテオマップで視覚化した酵母のゲノム

ゲノムの表示では、それぞれの遺伝子は1つずつあるということで同じ面積で表しています。続いてプロテオーム。

プロテオマップで視覚化した酵母のプロテオーム

プロテオームの表示では、それぞれのタンパク質は発現量に応じた大きさで表されています。タンパク質の発現量は、最大のものは細胞あたり100万分子以上あり、少ないものは1分子以下しかありません。ゲノムとプロテオームの両者を比較してみると、情報(遺伝子)が機能(タンパク質)として取り出される際に「量」の情報が付け加わり、まるで「体性感覚のホムンクルス(人造人間)」のように拡大・縮小を伴って再構成されていることが見て取れます。

ただ、拡大・縮小が感覚の鋭敏さに直接反映されているホムンクルスとは異なり、量の多い・少ないが細胞にとってのタンパク質の必要性・重要性を反映しているわけではありません。

プロテオームの全体を見ているこの図だと量の少ないタンパク質にどんなものがあるのかわからないので、便宜的にタンパク質をその発現量に応じてクラス5からクラス0の6つにクラス分けし、そのクラスのタンパク質だけを取り出してプロテオマップで視覚化していみます。クラスの数字はそのタンパク質が細胞内に何桁存在するかを表します。例えば、クラス5のタンパク質は10の5乗(100万)分子以上存在するもの、クラス3のタンパク質は10の3乗(1000)分子以上存在するタンパク質です。

まずクラス5タンパク質です。解凍系と翻訳関係のタンパク質(主にリボソーム)がほとんどで、全タンパク質を見たときとあまり様相は変わりません。酵母のタンパク質のほとんどはクラス5タンパク質が占めているんですね。

クラス5タンパク質

次にクラス4です。リボソームの残りに加えて、核酸や脂質、アミノ酸代謝のタンパク質群が現れてきます。

クラス4タンパク質

クラス3に降りてみます。代謝酵素の残り、リボソームの構成に関わる因子、プロテアソームなど。

クラス3タンパク質

クラス2です。染色体関連、転写の基礎因子、スプライソソームなどが見えてきます。

クラス2タンパク質

クラス1、つまり細胞あたり10~100分子存在するタンパク質群。染色体関連や転写因子などが見えます。細胞周期やDNA複製に関わるものは、細胞周期の中で一過的に発現するものなので発現量が低いのかもしれません。

クラス1タンパク質

そしてクラス0。この条件(栄養豊富で盛んに増殖している細胞)では、ほとんど発現していないタンパク質ということになります。輸送に関わるタンパク質、転写因子の他、この増殖条件では必要ないミトコンドリア、糖代謝、減数分裂関連のタンパク質などが見えます。

クラス0タンパク質

とまあこんな風にプロテオームを分解して眺めるだけでも、タンパク質の発現量は何らかのルールに従って決まっているんじゃないかと思えます。タンパク質の発現量は細胞にとっての必要性(需要)に応じて決まっているのだろうとか、同じ細胞機能に関わるタンパク質たちの発現量の比を整えるルール・メカニズムが働いているのだろうとか。

最後に各クラスに含まれるタンパク質の種類の割合を示しておきます。クラス5に含まれるタンパク質は全タンパク質のほとんどを占めますが、種類は非常に限られています。それから、クラス0のタンパク質が結構あります。これらは、培養条件に応じて発現してくるタンパク質なのかもしれません。それに加えて、プロテオームの技術(質量分析)でうまく検出できていないものも含まれていると思われます。

各クラスに含まれるタンパク質の割合
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