Visual account of protein investment in cellular functions. Liebermeister W, Noor E, Flamholz A, Davidi D, Bernhardt J, Milo R. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 Jun 10;111(23):8488-93. doi:10.1073/pnas.1314810111. Epub 2014 Jun 2. PMID:24889604
近年、細胞内でのタンパク質発現量の全体像(プロテオーム)のデータが高精度かつ網羅的に測定できるようになってきました。以前の本ブログでも、ゴールドスタンダードになるだろうというプロテオームのデータを紹介しました。
次の問題は、どうやって人の直感を刺激する形でこのような膨大な数値データを可視化するかです。
例えば、以下のグラフは出芽酵母の各タンパク質の発現量です。
「発現量はそれぞれ大きく異なっているんだなぁ」という以上の情報を得ることは難しいですね。しょうがないので個別にデータを眺めてみて、なんとなく頭のなかでイメージをつくるしかありません。ヒートマップや円グラフで発現量の高い低いを見ることは、これよりはましですがやはり全体像をイメージするには十分ではありません。
そこで作られたのが、Proteomapです。
Proteomapでは、発現量が高いものをより大きなポリゴンで描き、機能カテゴリーが近いものを近くに集め近い色使いで描きます。そうすることで、細胞がどのような機能カテゴリーにあるタンパク質をよりたくさん作っているのかがわかります。
タンパク質がよりたくさん発現するということは、それだけタンパク質合成にコストがかかっているということであり、細胞がどれだけそのプロセスにリソースを割いているのかが想像できます。
Proteomapのサイトでは、自分達のデータをつかってProteomapを作ることもできます。
以下は、出芽酵母のプロテオームのデータ(Kulak 2014)をProteomapで示した例です。
Proteomapは表示の細かさで4つのレベルがあります(上記はレベル3とレベル4を示してあります)。細胞がどんな生命活動に大量のコストを払っているか(タンパク質をよりたくさん作っているか)が一目瞭然だと思います。
上記の論文では、種や組織、培養条件によってプロテオームの構成がどう変わるのかも視覚化していて、その違いを直感的に理解することができることがわかります。
以下では、プロテオームとトランスクリプトーム(自前のデータ)をProteomapで比較してみました。mRNAとタンパク質の発現量に差があるものもありますが(これらは翻訳段階の制御があるのかもしれません)、概ね似たような構成になっていることが見て取れます。
Proteomapは直感に訴えるだけでなく、見た目がとても綺麗だということも大きな特徴だと思います。今後のプロテオーム視覚化のスタンダードになるような気がします。
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2016年4月19日追記
Proteomapをさらにいじってみました。今度はゲノムの情報とも比較して見ます。図が小さくて見難いですが、ゲノムの情報がタンパク質として取り出される時の「量のインパクト」がどれくらいあるかがよくわかると思います。
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