Moonlighting proteins in yeasts.
Gancedo C, Flores CL.
Microbiol Mol Biol Rev. 2008 Mar;72(1):197-210, table of contents.
Review.PMID: 18322039
Moonlightningとは、副業のことで、つまり1つの蛋白質が一見別のもう1つの機能をもつ現象のことを言っている。
酵母ではいくつかの代謝酵素がこのような機能を持つことが見つかってきている。有名な例では、グルコースリン酸化酵素のHxk2が、蛋白質のリン酸化を行なったり、転写制御に関わるという機能も持っていることが知られている。
例えば最近の例で言えば、フォスファターゼの制御サブユニットが、CoA合成酵素のサブユニットであったというものがある。
Moonlighting proteins Hal3 and Vhs3 form a heteromeric PPCDC with Ykl088w in yeast CoA biosynthesis.
Ruiz A, González A, Muñoz I, Serrano R, Abrie JA, Strauss E, Ariño J.
Nat Chem Biol. 2009 Dec;5(12):920-8. Epub 2009 Nov 1.
PMID: 19915539
こういう発見はなかなか面白いのだが、構造からのMoonlightning機能の予測は全くできないので、はやりのゲノム科学からのアプローチは大変難しい。やはり生化学の力が必要となる。
話は変わるが、現在データベースに登録されている出芽酵母の遺伝子の84%について(なんらかの)機能が分かっているとされている。
少し前まで私は、「ここまで徹底的に調べられてきた酵母という生き物で、まだ機能の分かっていない遺伝子というのは、さして調べる必要のないものであり、それに焦点を絞って解析しても大して面白いことは分からないだろう」と思っていた。
しかし、最近の研究を見ていると、むしろ逆に、徹底的に調べても機能が分からなかった遺伝子だからこそ、私たちが予想していなかった新たな細胞の機能を担っているという例が頻繁に見られている(例えば以下)。
Multiple assembly chaperones govern biogenesis of the proteasome regulatory particle base.
Funakoshi M, Tomko RJ Jr, Kobayashi H, Hochstrasser M.
Cell. 2009 May 29;137(5):887-99. Epub 2009 May 14.
PMID: 19446322
Atg32 is a mitochondrial protein that confers selectivity during mitophagy.
Kanki T, Wang K, Cao Y, Baba M, Klionsky DJ.
Dev Cell. 2009 Jul;17(1):98-109.
PMID: 19619495
Mitochondria-anchored receptor Atg32 mediates degradation of mitochondria via selective autophagy.
Okamoto K, Kondo-Okamoto N, Ohsumi Y.
Dev Cell. 2009 Jul;17(1):87-97.PMID: 19619494
もしかすると残された16%、941個の遺伝子は宝の山であり、酵母の機能未知遺伝子の機能を追う研究は、もっと重要視されるべきなのかもしれない。
941と言えば結構な数である。酵母での遺伝子ハンティングは実はまだまだこれからなのだ。