分子機械の複雑さを増やす方向への進化

Evolution of increased complexity in a molecular machine.

Finnigan GC, Hanson-Smith V, Stevens TH, Thornton JW. Nature. 2012 Jan 9;481(7381):360-4. doi: 10.1038/nature10724. PMID:22230956

研究室のラボセミナーで紹介された論文です。

ATPaseのローターのタンパク質は6量体ですが、カビ以外の生き物では、16というサブユニットが1つと、3というサブユニットが5つから構成されるのに対して、カビ類では3から派生した11というサブユニットが3を1つ置き換えています(ですから16が1つ、3が4つ、11が1つから構成されています)。

311は遺伝子重複により生じた遺伝子が作るタンパク質ですが、両者を置き換えることは出来ません。ところがこれらの「祖先型」のタンパク質ならば3でも11でも置き換えることができるのです。

これは、遺伝子重複によって生じた遺伝子がどのように機能分化し、分子機械の複雑さを増していったのかを実験的に見事に検証した例だと言えます。

私が感銘したのは、祖先型の遺伝子の作り方です。(詳細はちゃんと理解できていないのですが)「系統樹をさかのぼって祖先型の遺伝子の構造を予測し、それを人工的に作った」らしいのです。なるほどそれは確かにできそうですが、実際にできるもんなんだなあ、という驚きがありました。

ただし、この論文の主旨は、「重複した遺伝子がフィットネスの低下を起こさない形で変異を起こし集団に定着していった」という事らしいのですが、それにはどうも納得がいきません。複雑さが増した(3つのサブユニットからなるローターをもつ)ATPaseと、その祖先型の(2つのサブユニットからなるローターをもつ)ATPaseとくらべて、その活性がいろんな意味で全く同じなのかという検証は必要であろうと思われます。

カビにとって、このより複雑なATPaseをもつことのメリットは本当にないのかどうか。

ラボセミナーも盛り上がりました。

 

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