出芽酵母のすべての「ターミネーター」の活性測定

A Genome-Wide Activity Assessment of Terminator Regions inSaccharomyces cerevisiae Provides a ″Terminatome″ Toolbox. Mamoru YamanishiYoichiro ItoReiko KintakaChie ImamuraSatoshi KatahiraAkinori IkeuchiHisao Moriya, and Takashi Matsuyama, ACS Synth. Biol., , , pp – DOI: 10.1021/sb300116y Publication Date (Web): February 11, 2013

豊田中央研究所と当研究室との共同研究の論文です。

オンラインで発表されたのが2月で、3月か4月号に発行される(+PubMedに掲載される)んだろうと思っていたのですが、待てど暮らせどその気配がない。「順番待ち」を考えると今年中に発行されるのだろうかと不安になるペースです。発行をまって当ブログで紹介しようと思っていたのですが、もう待てないので紹介することにします。

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それぞれの遺伝子には、その発現をつかさどるプロモーター領域とターミネーター領域があります。通常、プロモーター領域は遺伝子の上流(5’領域)に存在し、ターミネーター領域は下流(3’領域)に存在しています。

プロモーターは「遺伝子がいつ、どれくらい発現するのか」を決める重要なDNAの領域で、とてもよく調べられています。ターミネーター領域には、転写の終結を決めたり、mRNAの安定性、翻訳の効率を決めるDNA/RNAの配列があることが知られていますが、それぞれの遺伝子のターミネーター領域の遺伝子発現に与える影響(ここでは「活性」ということにします)は、体系的に調べられていません。これは、ゲノムの構造がもっともよく調べられている出芽酵母でも同様です。

本研究は私の知る限り、ターミネーター領域の遺伝子発現に与える影響を、すべての生き物ではじめて体系的に調べた研究ということになると思います。

実際には、決まったプロモーターの下流にクラゲの緑色蛍光蛋白質GFPを結合し、その下流に出芽酵母のそれぞれの遺伝子(約5300)のターミネーター領域を組み込み、GFPの発現量を見ることでターミネーターの活性を評価します。

その結果、ターミネーターの活性は、70倍の開きがあることが分かりました。

私も長いこと酵母を使って研究していますが、ターミネーターの活性が70倍の開きをもっているというのは少々驚きでした(もっと寄与率は低いと思っていました)。細胞内のタンパク質の存在量は10,000倍以上の開きがあるとされているので、それに比べると確かに開きは大きくないので、その他の要素(プロモーターなど)が、実際のタンパク質の存在量を強く決定づける要素ではあるのでしょう。

「mRNAを不安定化する3’領域の役割」というのはよく知られているので、GFPの発現が低くなるターミネーター領域があることは予測していたのですが、私たちがこの研究をやっていて驚いたのは、GFPの発現を高くさせることができる(活性の高い)ターミネーター領域が存在していたことです。

活性の高いターミネーターは、基準としてもちいていたPGK1ターミネーターの2倍程度ではありましたが、それでも、これがどのようなメカニズムによって行なわれているのか大変興味があるところです。特に活性の高いターミネーター領域は、リボソームタンパク質のそれがおおく含まれていたことから、なにか共通のメカニズムがあるはずです。それは今はよくわかりません。

また、ここで調べられたターミネーターの活性は、今後「酵母をもちいたものづくり」に有用なツールとなると考えられます。

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