Quantitative nature of overexpression experiments.
Moriya H. Mol Biol Cell. 2015 Nov 5;26(22):3932-9. doi: 10.1091/mbc.E15-07-0512. PMID:26543202
最近、MBoC(Molecular Biology of the Cell誌はこう略すらしい)に発表した私の論文です。MBoCのQuantitative biology特集号のperspectiveとして書かせていただきました。手前味噌ですみませんが紹介させていただきます。
この論文では、これまで定性的に捉えられがちだった過剰発現実験の定量的な側面を解説しています。というか、過剰発現実験というのは本質的には、「どれだけ過剰か」という定量的な実験なので、それを理解しておかないと結果の解釈を間違ってしまうよ、というメッセージを書きました。
また、これまでにいろいろ行われてきた過剰発現実験の結果をまとめて、過剰発現が細胞機能の障害を起こす「一般的なメカニズム」を4つ紹介しています。
Resource overload(リソース過負荷)、Stoichiometry imbalance(化学量不均衡)、Promiscuous interaction(乱雑な相互作用)、Pathway modulation(パスウェイ修飾)
基本的にはタンパク質の過剰発現が引き起こす細胞機能の障害は上の4つに分類されると考えています。他にあるようでしたら教えていただけると嬉しいです。
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ちなみにMBoCに初めて論文を掲載したのですが、「MBoCの著者になっておめでとう!」ということでTシャツが送られてきました。

MBoCのTシャツ
stress granuleのような今流行りのliquid-liquid phase separationが、構成因子の高発現でectopicに引き起こされるようなケースはどうでしょう?
細胞の中は様々な凝集体だらけというパラダイムも最近でてきていますね。私の知る限り、凝集体=Toxicというわけではなく、逆に凝集体がToxicityを避けるために作られるという説もあるようです。今のところ、「Toxicな凝集体は必須なタンパク質を特異的に巻き込むからToxic」という事例は複数ありますが、凝集体の物理化学的な性質でToxicityがでるという例は知りません。また調べてみたいと思います。
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