Skip to content
酵母とシステムバイオロジー
酵母とシステムバイオロジー

A Blog for Yeast and Systems Biology

  • このサイトについて
  • 新着記事
  • サイトマップ
酵母とシステムバイオロジー

A Blog for Yeast and Systems Biology

2015-09-16

ホルモンを利用した新しい遺伝子発現制御システム

酵母コロキアムに以前私が投稿した内容に改変・追記して載せています。

Fast-acting and nearly gratuitous induction of gene expression and protein depletion in Saccharomyces cerevisiae. McIsaac RS, Silverman SJ, McClean MN, Gibney PA, Macinskas J, Hickman MJ, Petti A, Botstein D. Mol Biol Cell. 2011 Sep 30. PMID: 21965290

David Botsteinのグループが2011年に発表した論文です。酵母で遺伝子の発現をON/OFFするのに最もよく使われるのがGAL promoterで、その次がMET promoterでしょうか?これらは確かにON/OFFがはっきりして反応も早いという評判なのですが、「栄養条件をかえなければならない」という最大のデメリットがあります。

今回発表されたのは、エストロゲンレセプターの核ー細胞質移行の制御をエストロゲン(β-setradiol)で制御するというシステムです。転写因子の構造が、GAL4DB-Estrogen receptor-VP16ADである事からGEVと呼ばれています。ホルモンを加えてわずか5分で転写活性化が始まるという「迅速な」システム、また、このGEV-エストロゲンによって、GAL遺伝子群を含むわずかな遺伝子しか影響を受けないとのことです。

GEVの良いところは、GAL1プロモーターという今までに非常によく使われてきたリソースがそのまま使えるという事です。このホルモンによる遺伝子発現制御システム、これから広まっていくのでしょうか?

気になるこのホルモンのお値段ですが、Sigma-Aldrichで調べると250mgで5,200円。論文によると10nMで毒性もなくうまく使えるという事で計算してみると、10nMの溶液1Lあたり・・・5銭!!ガラクトース(2%として1Lあたり約100円)よりずっと安い!? ただ先日の酵母の学会でも研究者間で話題になったのですが、これ女性ホルモンの誘導体なので、人体に悪影響があるかもしれません。そのうち男性の酵母研究者がみんな女性っぽくなったりして・・・。

 

以下は追記です。

ちなみにこの実験系はさらなる改良版が作られています。

Synthetic gene expression perturbation systems with rapid, tunable, single-gene specificity in yeast. McIsaac RS, Oakes BL, Wang X, Dummit KA, Botstein D, Noyes MB. Nucleic Acids Res. 2013 Feb 1;41(4):e57. doi: 10.1093/nar/gks1313. Epub 2012 Dec 28. PMID:23275543

こちらではさらに人工転写因子や結合配列の改良を行って、目的の遺伝子の発現以外にはまったく影響を与えないと謳っています。

実際、私もこの実験系を入手して使ってみました(論文に書いてあるとおりにはいかないということはよくあることですので)。すると確かに GALプロモーターと同じく、非誘導条件での発現は検出されないレベルで、誘導条件での発現はGALプロモーターの6倍程度あるという、かなり優れたシステムであることが確認できました。

この実験系の最大のデメリットは、人工転写因子を酵母に持たせなければならないことですね。色々な株で解析したい場合に、いちいち人工転写因子をゲノムに持たすのは少し厄介です。

 

facebookShare on Facebook
TwitterTweet
(Visited 2,003 times, 4 visits this week)
システムバイオロジー テクノロジー 実験結果 論文 酵母

投稿ナビゲーション

Previous post
Next post

Related Posts

最小のCDK制御ネットワークによる細胞周期の駆動

2011-05-16

Driving the cel…

Read More
システムバイオロジー

CellDesigner4.3でCell Cycleモデルを再構築してみよう(3)

2014-03-252018-07-25

前回「CellDesigner…

Read More
エッセイ

解説記事「細胞のタンパク質発現のリソース配分とキャパシティ」を化学と生物に書きました。

2016-07-272017-08-09

「細胞のタンパク質発現のリソー…

Read More

コメントを残す コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

3 × 2 =

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください。

人気の記事

  • 論文の図とレジェンドに見る悪しき伝統 (135)
  • 出芽酵母と分裂酵母の基本知識 (82)
  • ナノポアシーケンサーMinIONインプレッション (35)
  • 大腸菌の形質転換ではヒートショックも後培養もいらない(こともある) (46)
  • 制限酵素のイタリック表記は必要ない (13)
  • 微生物実験でのイエローチップの(驚くべき)使い方 (36)
  • 「赤色蛍光タンパク質 yEmRFP/mCherry が切れちゃう謎」が解決した (16)
  • シリーズ過剰発現・第5回「過剰発現に用いられるプロモーター」 (22)
  • シリーズ過剰発現・第1回「過剰発現とは?」 (25)
  • 岐路に立つ酵母の栄養要求性マーカー (16)
©2026 酵母とシステムバイオロジー | WordPress Theme by SuperbThemes