ホルモンを利用した新しい遺伝子発現制御システム

酵母コロキアムに以前私が投稿した内容に改変・追記して載せています。

Fast-acting and nearly gratuitous induction of gene expression and protein depletion in Saccharomyces cerevisiae. McIsaac RS, Silverman SJ, McClean MN, Gibney PA, Macinskas J, Hickman MJ, Petti A, Botstein D. Mol Biol Cell. 2011 Sep 30. PMID: 21965290

David Botsteinのグループが2011年に発表した論文です。酵母で遺伝子の発現をON/OFFするのに最もよく使われるのがGAL promoterで、その次がMET promoterでしょうか?これらは確かにON/OFFがはっきりして反応も早いという評判なのですが、「栄養条件をかえなければならない」という最大のデメリットがあります。

今回発表されたのは、エストロゲンレセプターの核ー細胞質移行の制御をエストロゲン(β-setradiol)で制御するというシステムです。転写因子の構造が、GAL4DB-Estrogen receptor-VP16ADである事からGEVと呼ばれています。ホルモンを加えてわずか5分で転写活性化が始まるという「迅速な」システム、また、このGEV-エストロゲンによって、GAL遺伝子群を含むわずかな遺伝子しか影響を受けないとのことです。

GEVの良いところは、GAL1プロモーターという今までに非常によく使われてきたリソースがそのまま使えるという事です。このホルモンによる遺伝子発現制御システム、これから広まっていくのでしょうか?

気になるこのホルモンのお値段ですが、Sigma-Aldrichで調べると250mgで5,200円。論文によると10nMで毒性もなくうまく使えるという事で計算してみると、10nMの溶液1Lあたり・・・5銭!!ガラクトース(2%として1Lあたり約100円)よりずっと安い!? ただ先日の酵母の学会でも研究者間で話題になったのですが、これ女性ホルモンの誘導体なので、人体に悪影響があるかもしれません。そのうち男性の酵母研究者がみんな女性っぽくなったりして・・・。

 

以下は追記です。

ちなみにこの実験系はさらなる改良版が作られています。

Synthetic gene expression perturbation systems with rapid, tunable, single-gene specificity in yeast. McIsaac RS, Oakes BL, Wang X, Dummit KA, Botstein D, Noyes MB. Nucleic Acids Res. 2013 Feb 1;41(4):e57. doi: 10.1093/nar/gks1313. Epub 2012 Dec 28. PMID:23275543

こちらではさらに人工転写因子や結合配列の改良を行って、目的の遺伝子の発現以外にはまったく影響を与えないと謳っています。

実際、私もこの実験系を入手して使ってみました(論文に書いてあるとおりにはいかないということはよくあることですので)。すると確かに GALプロモーターと同じく、非誘導条件での発現は検出されないレベルで、誘導条件での発現はGALプロモーターの6倍程度あるという、かなり優れたシステムであることが確認できました。

この実験系の最大のデメリットは、人工転写因子を酵母に持たせなければならないことですね。色々な株で解析したい場合に、いちいち人工転写因子をゲノムに持たすのは少し厄介です。

 

(Visited 481 times, 2 visits this week)

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください