「矛盾した制御ループ(iFFL)」と「理にかなった制御ループ(cFFL)」

とある解説記事を読んでいて、「矛盾した制御ループ」と「理にかなった制御ループ」という言葉が出てきた。

これはどんな制御ループの事を言っているのだろうとよくよく読んでみると、矛盾した制御ループが、incoherent Feedforward Loop(iFFL)であり、理にかなった制御ループが、coherent Feedforward Loop(cFFL)の事をさしているのだと知った。

coherentとincoherentという単語は、生物学をやっていると時々出てくるが、訳が難しい。coherentの私のイメージは、接着とか粘着、それに伴って一貫性があるということになる。in-はその逆。

生物学的な話になると、FFLは3つのノードがある時に作られるループ構造だが、cFFLは制御ループ内に「矛盾がなく」、iFFLは、制御ループ内に「矛盾がある」。以下は、Uri Alonの「システム生物学入門」の記載である(傾いていてすみません)。制御に「矛盾がある/ない」というのがどういう意味か分かると思う(C1-FFLとI1-FFLを見ると分かりやすい)。

したがって、iFFLを「矛盾した」制御ループという言い方をする事には「矛盾はない」ように思う。しかし、cFFLを「理にかなった」と言ってしまった場合には大きな誤解が生じる。なぜならば、それではiFFLは、「理にかなっていない」という意味で矛盾したと言われているような気になるからだ。そもそも「理にかなった」「理にかなっていない」というのは何をもってそういうのか?

件の解説記事にこんな記述がある。

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“矛盾した”制御ループ(iFFL)が基本型になっていた.このような系はむだが多いようにも思えるが,

ーー

筆者のイメージでは、実は矛盾したというのは、「むだが多いようにみえることから、理にかなっていない」という意味でも「矛盾した」と考えているのかもしれない。

しかし、iFFLは、内部構造が矛盾しているだけであり、生物学的には非常に「理にかなった」制御構造であるという事は、Uri Alonの教科書にもあるが、多くの事例で明らかになっている。iFFLは、パルス応答、応答時間の加速など、生命システムにとって非常に重要な機能を持った制御構造であり、細胞内のネットワークで高頻度に見られる「ネットワークモティーフ」である。

Uri Alonの教科書の日本語訳では、coherentとincoherentのいい訳が見つからなかったのだろう、そのままカタカナで書かれている。いずれにせよ、この「矛盾した」と「理にかなった」という日本語訳は、遺伝学のdominant、recessiveの日本語訳(優性、劣性)と同じように「誤ったイメージ」をもたらす危険性が非常に高い。

それだけでは意味がイメージしにくいにしても、「接合的、非接合的」などと言った方が誤解を生む心配を避けられるだろう。

 

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