2011-11-18 不誠実な研究発表 ちょっとこのブログの主旨から外れるかもしれませんが、「システムバイオロジー」という境界領域だからこそ時々ある話を書きます。 私は、時々人の発表を見て腹が立つことがあります。特に、きちんと筋書きが出来ていない、プレゼンテーションとしての完成度が低すぎるものに対しては腹が立ちます。聴く側の事を考えていない独りよがりのプレゼンは特に聞いているだけで腹が立ってくるのです。 先日、久しぶりに非常に腹の立つ講演を聞きました。しかしこれは、上記のカテゴリーではありません。上記のようにプレゼンの完成度が低いのは本人のスキルもあるからしょうがないとも言えますが、もっと根本的に、そのプレゼン、あるいは演者に「誠実さ」がまったく感じられなかったのです。そのプレゼンの目的すら分からない。上の立場から分かったような事を言いたかっただけとしか思えませんでした。 議論を盛り上げるために用意された場でしたので、その意味では成功したのかもしれません(実際、議論が紛糾しましたから)。しかし彼の発表のなかで、まじめに研究を行っているいろいろな人たちが「バカにされた気分」になったのではないでしょうか。それも、相手(演者)が、研究に対してきわめて不誠実な人間であればなおさらだです。 以下、やり取りの一部です。 ーー 演者(これから生物学に入ろうとしている情報系の研究者に対して):私たちは、大量データとって解析してネットワークを抽出しました。(ノードが100くらいあるネットワークを見せて)そしたら生物学者が、これ見て「それで何がわかったの?」と聞くんです。生物学者ってそういう人たち。ネットワークというものを信じていないんです。 会場から質問:そのネットワークはどうやってつくったんですか?情報学的なアルゴリズムを使った自動抽出ですか、それとも人間がマニュアルで作ったものですか? 演者:えっとー・・・これは、XXXというデータベースをもとに作りました。 会場:で、どっちなんですか?(←情報系の人たちにとっては、これは重要な情報です) 演者:多分マニュアルだったと・・・あ、もう発表時間終了ですね(←明らかにごまかした)。 ーー ちなみに私は生命システムに存在する「ネットワーク」の存在を信じる実験生物学者です。その私ですら、彼の発表をみて「それで何が分かったの?」と思いました。「ノードが100個もあるネットワークが抽出されたこと(しかも発表者がその作り方が分かっていない!)」を見せられて、なにを感じればいいのでしょうか?「生物は複雑ですね?」でしょうか?それは生物学者に限った感想ではないでしょう。 必要なのは「仮説」です。そこから何か仮説を導きだして、実験的に検証できるようにしなければなりません。どうやってネットワークを作ったかも知らなければ、そりゃ仮説なんて作れるわけないですよ。 この人は、研究室を運営する立場にある人です。多分大きな研究室で、部下に研究を丸投げでやらせているからだと思いますが、自分は研究の詳細がまったく分かっていないようでした。この人は、”生物学者”と”ネットワーク”についてものを言う資格はありません。私は、こういう「自分が発表している研究」の詳細について何も知らないのに、物事について分かったような口をきく人が大嫌いです。まあ、そんな人が好きな研究者はいないと思いますが。 特にそれが研究者である場合には最悪です・・・というか、それ以前にその人は「研究者」を名乗ってはいけないでしょう。自分の発表した内容もきちんと説明できない人が、もっと大きな概念や研究集団の考え方を、その集団の立場を代表して言う資格など毛頭ありません。誠実さのない、失礼極まりない行為です。 ちなみに、その人は研究会参加者の「寄せ書き」にもまた非常にえらそうな、かつ的外れな事を書いて去っていきました。私は思わず寄せ書きなのにその反論を書いてしまった・・・。4日ほどある研究会に半日ほど来て好きなことを言って帰っていったので、単に「空気が読めなかった」だけかもしれない。しかし、とにかく参加者達には非常に悪い印象を与えた事だけは確かです。 私もああは絶対になるまいと、強く心に誓いました。 (Visited 510 times, 2 visits this week) エッセイ システムバイオロジー 人物 会議
Metabolic cycling in single yeast cells from unsynchronized steady-state populations limited on glucose or phosphate. 2010-04-15 Silverman SJ, P… Read More